研究課題/領域番号 |
15K00960
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
岡 正明 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50292355)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物学習 / ICT活用 / 拡張現実感 / プロジェクションマッピング / インタラクティブパフォーマンス |
研究実績の概要 |
本研究では、AR(拡張現実感)、VR(バーチャルリアリティ)、プロジェクションマッピング、インタラクティブパフォーマンスなどの最新の情報技術を活用し、効率的・効果的な植物学習を実現する教材開発を行う。平成29年度の主な成果は、以下の項目である。 1.前年までに開発した「圃場に見立てた床面に配置したマーカー上に、トウモロコシ植物体3DCGをAR表示し、栽植間隔による相互遮蔽の違いを視覚的に学習できるシステム」について、教員養成系大学の授業で実践して有用性を確認するとともに、教育現場での実施方法を検討した。 2.これまでAR・プロジェクションマッピングで表示した植物3DCGは、現実の植物体の形態的特徴を計測したデータを元に専用ソフトウエアを用いて手作業で作成していたが、観察対象とするには精度が不十分であった。対象物体を多方向から撮影した画像を元に精密な3DCGを作成するソフトウエア「Agisoft Photo Scan」を適用することにより、学校での観察に耐えうる高精度の植物3DCGを作成できることを明らかとした。 3.一般的なARでは平面マーカーを使用するため、3DCGを表示するカメラ角度に制限があり、また裏側から3DCGを見ることはできなかった。立方体6面をマーカーとする立体マーカーの技術を導入することにより、平面マーカーの制限を解消することができ、より自由にAR観察ができるようになった。 4.その他の成果として、(1)開発中のICT技術とともに教育現場で使用するソフトウエアとして、植物を撮影した画像上の長さ・面積を計測し、また花色・葉色を数値的に表示するタブレット・アプリケーションを作成した。(2)インタラクティブ・パフォーマンスの基礎データとして取り組んでいる3Dプリンタを用いて制作した栽培ポット・水耕容器などについて、植物栽培による評価実験を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究最終年となる予定であった平成29年は、大学のある仙台市で異常気象(36日連続の降雨の記録、日照時間が平年の20%程度)となり、3DCG作成の元データを取得するために圃場で栽培していた作物が極端な生育不良となった。そのため、栽培した植物体の立体構造データの取得ができず、拡張現実での植物体験を行うシステム開発には遅れが出た。この理由から、補助事業期間延長承認申請書を提出し、承認していただいた。 一方、本研究の主要部分である生徒に拡張現実の植物観察をより実感を持って体験してもらうシステムについては、大きな2つの進展があった。研究成果の概要にも記述したが、ひとつは特殊なソフトウエアを用いた精度の高い植物3DCGの制作が可能となったこと、もう一つは従来のARシステムの最大の弱点を立体マーカー技術を導入したことにより解消できたことである。この2つの成果により、本研究が教育現場での植物学習に適用できる水準に進展したと考えている。 自然現象による実測データ取得ができなかったトラブルもあったが、システム開発自体は大きな進歩があったことから、「(2)おおむね順調に進展している」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間延長により研究最終年度となる平成30年度は、これまで開発したICT活用教材の改良と、より教育効果が高いと期待されるVRおよびインタラクティブパフォーマンスを用いた教材開発を進め、また教育現場での実践を積み上げて教育効果の検証を行う。具体的な研究計画は、以下の項目である。 1.これまで開発したタブレット、スマートグラスを用いたARとVR手法を改良し、栽培条件と植物成長の関係を体験的に学習できる教材開発を進める。学習者が主体的に学べるゲーム要素を含む教材を予定している。 2.植物管理(例えば整枝作業や誘引など)による植物形態変化をシミュレートするインタラクティブパフォーマンス教材を開発する。本研究でも使用してきたモーションキャプチャ機能を有するKinectを、学習者の動作を把握する装置として使用する予定である。 3.開発した教材を小中学校や教員研修などで実践し、ICTを用いた植物学習教材の教育効果を検証する。また、開発したICT活用教材を用いて対話的な学習を可能とする授業案も作成する。 4.本科研費では幅広い最先端ICT技術を植物学習に適用する研究を行ってきた。同様の成果を報告している学術論文は少なく、教育現場での使用例はほとんどないのが現状である。研究成果を論文として公表するとともに、ソフトウエア・授業案などは可能な限り、Web上で公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、実際の植物体の立体構造データを元に3DCGを作成し、生徒に拡張現実での植物体験を行わせるシステム構築を目指している。平成29年度夏期も大学のある仙台市の実験圃場にて12種類の代表的教材作物を栽培していたが、8月の異常気象(36日連続の降雨の記録、日照時間が平年の20%程度)により極端な生育不良となり、予定していた植物体計測および植物体3DCG作成が実施できなかった。そのため、計測のための謝金と消耗品購入が支出できず、次年度使用額が生じた。なお、同様の理由で「補助事業期間延長承認申請書」を提出し、承認されている。
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