研究課題/領域番号 |
15K00961
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
高田 淑子 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (70302255)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 天文教育 / IT教育 / ICT / 理科教育 / インターネット望遠鏡 / 教科教育 / 教育工学 |
研究実績の概要 |
天文分野は主に夜間観察する事象を昼間の授業内に学習するため、授業中の実験・観察が困難で、「本物」の星空や天体を授業中に見せる機会はほとんど無い。しかし、ICT機器やインターネットを活用すれば、「今の天体」を観察することが可能である。そこで、本研究では学校に導入されつつあるモバイル型タブレット端末から遠隔にある天体望遠鏡を生徒自ら操作して天体観測を授業中に行うモバイル望遠鏡、及び、モバイル天文台を構築し、教育現場における授業実践を通して、新しい天体観測授業を開発する。また、タブレット端末を用いた学習に望遠鏡操作と天体観察という新しい機能を提供し、1台の端末が無限に広がる学びの世界の扉になる可能性を提案し学校教育のICT化に寄与することを目的とする。 本年度は、モバイル望遠鏡ならびにモバイル天文台システムの要件を検討し、モバイル型端末対応型のインターネット望遠鏡、いわゆるモバイル望遠鏡の構築を実施した。望遠鏡制御システムにおいては、望遠鏡制御用PCサーバーのOSを最新OSに更新し、本OS上で稼働する望遠鏡制御ソフトウエアを導入し、望遠鏡の制御、格納、望遠鏡追尾機能等、望遠鏡の遠隔操作を可能とするための機能を試験運用した。さらに、高感度カラーカメラで撮像する天体映像を遠隔地からウェッブブラウザで確認できるようにし、既存の天文台ルーフ自動開閉システムが新OS上で問題なく稼働することを確認した。望遠鏡の操作画面を遠隔側で共有するために、本年度はChromeのリモートデスクトップ機能をiOSとWindows10搭載のタブレット端末を用いて試験運用し評価した。 さらに、2015年11月に、本モバイル望遠鏡システムを用いた月の表面の観察授業を小学生約20名を対象に実施し、授業に活用できることを実践した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モバイル望遠鏡システムの構築に関しては、新OS対応のシステム環境がおおむね整備できた。今後は、遠隔での操作用タブレット端末のハード面や遠隔からの操作方法等のソフト面について、さらに具体的な検討が必要である。 また、学校現場におけるネットワーク環境を考慮すること等の課題があげられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度検討したモバイル望遠鏡の各制御システムならびに遠隔システムを統合し、モバイル望遠鏡ならびにモバイル天文台について遠隔地からの運用を実施し、問題点の洗い出しを行う。また、観察対象によって、視野角、映像の感度等、異なる撮像装置の仕様が求められるため、撮像カメラ、焦点距離の異なる天体望遠鏡等必要な機材を検討する。 また、モバイル望遠鏡の有効な活用方法について検討し、各学校校種で学習する星座や天体の観察の実践授業を検討する。連携研究者の協力を得つつ、授業実践を展開し、モバイル望遠鏡の評価並びに活用授業の評価を実施する。 モバイル天文台のホームページを作成し、ホームページからも利用者を募るほか、他大陸のインターネット望遠鏡を昼間の授業で活用し、モバイル端末による天体観測を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
IT機器の進歩は日進月歩ですぐに陳腐化してしまう問題がある。そこで、現試験段階では、デモ機を活用したり他目的用の機器の一時利用などにより、できる限り、購入せずに構築することを心掛けた。そのため、物品費の繰り越しが発生したが、これは、最新機器で構築するための布石ととらえている。 また、今年度は、近隣開催の研究会に参加したり、他出張と伴わせた研究会参加により、旅費が発生しなかった。これらも、次年度以降、広く意見を求めるように出張を企画する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度購入予定であった物品の購入を検討する(iOS/Androidの各タブレット端末、セキュリティ管理ソフト、その他リモートデスクトップ用ソフトウエア、ルーター等のネットワーク関連設備)。 また、国内出張回数を増やし意見交換等を実施する。
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