天文分野は、主に夜間観察する事象を昼間の授業内に学習するため、授業中の実験・観察が、困難で「本物」の星空や天体を授業中に見せる機会はほとんどない。しかし、ICT機器やインターネットを活用すれば、「今現在の星空・天体」を観察することが可能になる。そこで、本研究では学校に導入されつつあるモバイル型タブレット端末から遠隔にある天体望遠鏡を生徒自ら操作して天体観測を授業中に行うモバイル望遠鏡、および、モバイル天文台を構築し、教育現場における授業実践を通して、新しい天体観測授業を開発することを目的としている。 タブレット端末を1人1台所有した教室の環境において教師が各児童のタブレット端末からのモバイル望遠鏡操作のアクセス権限を制御して、天体観測授業を実施する方式を昨年に引き続き検証した。本年度は、本モバイル望遠鏡システムを用いて、小学校5・6年生、約20名を対象として天体観測授業を実施した。これらは、未来の教室における天体観測につながる可能性があり、IoTと天体観測の融合が学校の授業で可能となった。 特に、学校現場における1人1台のタブレット端末所有が現実的となった今、そのタブレットで何ができるかが重要であり、天体観測がアプリケーションとして加わることは、1台のタブレット端末が未来の学習の扉を開く可能性がある。 さらに、国立天文台石垣島観測所に、太陽の日周運動を観測しインターネット配信するための全天カメラを設置した。これにより、宮城県仙台市(緯度38度)、赤道地域のタイ(緯度7度)、日本最南端最西端の八重山諸島(緯度24度)と設置することができ、太陽の日周運動の教材作成のほか、ホームページにより公開された。
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