イノベーションを担う技術者教育として,近年,学生が地域に出て技術の社会実装プロセスを体験する教育実践が盛んになってきた.学外での活動は大きな教育効果が得られる一方,指導者は安全性と創造性・挑戦性との両立に苦慮し,どちらかを犠牲にしてしまうという潜在的な問題がある.社会実装教育では,安心・安全を当然のものとして埋め込んだものづくり・製品開発や社会提案の基礎となる「安全配慮姿勢」「安全創出意欲」の醸成と同時に,「リスク管理能力」を育成する好機会となり得る. 本研究では,社会連携型アクティブ・ラーニングに適用するための,学生の創造性や主体性を伸ばす安全実践教育プログラムを構築した.構築の過程で,社会連携型の教育・研究における海外の安全教育実践事例を調査し,その知見を,これまでの研究成果である認知主義や状況主義理論に基づいて開発した学生実験用の環境安全教育手法に付加し,社会実装教育に適用することを視野に入れて以下のプログラムを構築した. (A)主体性や自律性を涵養する安全行動チェック手法としては,① 作業・実験前 各種チェックシート,作業後の振り返りシート,② 危険予知テストや危険予知トレーニング(HAZIDやKYT4ラウンド法の学生教育版)である.(B)自らの行動や体験を客観的に分析して,安全を創出する学習プログラムとしては,③ ヒヤリハットの報告と教育的応用,④ 危険作業や危険実験の演示・体験プログラム,⑤ 安全創出についての知恵や工夫をワークショップ型で議論である.(C)起こりうる事故の可能性を予知し,事故抑制への対応を検討するための手法としては,⑥ 社会実装プロセスで実施するリスクアセスメントとリスクコントロール手法,⑦ 作業や実験の安全環境の検討に基づく,場のデザインや設備の整備である. 開発した教育プログラムは,全45頁の報告書にまとめWEBでも発信している.
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