研究課題/領域番号 |
15K00965
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
長谷川 雅康 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (00253857)
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研究分担者 |
荻野 和俊 大阪工業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30638292)
丸山 剛史 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (40365549)
疋田 祥人 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (40425369)
三田 純義 足利工業大学, 工学部, 教授 (50280350)
佐藤 史人 和歌山大学, 教育学部, 教授 (80324375)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高校工業教育 / 実習内容 / 専門性 / 技能習得 / 課題研究 / 工業技術基礎 / 製図 / 工業科教員養成 |
研究実績の概要 |
平成20年3月改訂の高等学校学習指導要領に基づく工業科新教育課程が平成27年度完成年度を迎える。新教育課程における実習内容等の実態調査をアンケート形式で実施した。この調査は1976年以来学習指導要領の改訂毎に実施しており、今回5回を数える。約40年にわたる実習教育の推移を指導内容等の面から分析・評価して、工業教育の必須要件と問題点を摘出することを目的としている。 今年度は初回回答校の内現存する93校を対象としてアンケート調査した。機械科、電気科、電子科、建築科、土木科、工業化学科、情報技術科、電子機械科の8学科(系)の実習と工業技術基礎、課題研究、製図の指導内容、指導形態等の回答を求めた。現在集計と分析を鋭意行っている。 また、工業科で行われている実習内容等を指導できる工業科教員の養成は、工業教育の成否を左右する重要な課題である。現今工業科教員の主な供給元は大学の工学部であるが、学部専門教育の内容とくに実験・実習が工業科における実習指導を担保できるかを検討している。 具体的に数校の工業科教員免許を出している大学工学部の機械工学科や電気・電子工学科の実験科目の指導内容を分析し、工業科の実習内容と対応させながら、問題の所在を検討している。これまでの検討では、電気・電子科の場合は、大学で指導内容と大旨対応しているため、大きな齟齬は生じにくいと考えられる。他方、機械工学科の実験内容は理論の検証に重きが置かれ、特に技能習得に関して指導がかなり不十分であり、工業科の機械実習の指導に支障来す可能性が濃厚と考えられる。 具体的な指導内容について高校工業科と大学工学部を比較検討することは、かつて殆どされて来なかったと考えられるため、その意義は大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の調査では、前回(2005年)の調査と比べて、高校現場の情報管理が厳しくなっているためか、調査票の記述内容が不十分なものが一定程度あり、再調査を余儀なくされている。そのため、集計の最終結果を得るのに時間を要している。 工業高校現場の多様性が増している。具体的には、従来の学科の枠組みが拡散しており、学科や系と言った名称も種類が増えている。本調査においては、従来の機械科、電気科、電子科、建築科、土木科、工業化学科、情報技術科、電子機械科という学科名による枠組みで捉えてきたが、今回その枠組みが現実から遊離する危惧が感じられる。 さらに、高校の統合化も進んでおり、そのためそこで設置される学科というよりコースなど選択幅などを広げていることも複雑化している要因である。 また、教育課程を公表していない高校があり、そうした高校には個別に公開を依頼しているため、時間を要している。本来教育課程は公表されるべき公的性格をもつ情報と考えるが、そうなっていない事例がかなりある。過剰な情報管理と思われる。 こうした事情があるため、集計・分析の視角を増やして行う必要に迫られている。
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今後の研究の推進方策 |
実習内容等の調査については、前年度の調査総括を踏まえ、さらに工業基礎(工業技術基礎)、課題研究など共通履修科目の導入に伴う、工業科全体に対する影響の分析をさらに詳しく行う。その結果を加え、今後の工業科のあり方に深く関わる諸問題を考究する。9月までに「調査報告書」を刊行して、調査回答校に配布する。前回の報告書(B5版160頁)と同程度を考えている。これらの作業には、代表者の長谷川のほか研究分担者の三田純義、荻野和俊、丸山剛史、疋田祥人、坂田桂一と研究協力者の辰巳育男、内田徹、竹谷尚人らが担当する。 なお、調査結果を日本産業技術教育学会、産業教育学会、技術教育研究会などの公開の場で発表して、批判を仰ぐ。それらの意見も含め、最終報告書の内容を煮詰める。さらに、過去4回の結果とデータの統合を行い、その結果の考察を集団的に行い、学会等に投稿する予定である。最終的には書籍の刊行も検討する。 工業科教員養成問題については、これまでの研究成果を踏まえ、工業科教員養成を行っている数大学を選び、具体的現実的な問題・課題を明らかにする。工学院大学、大阪工業大学、神奈川工科大学、千葉工業大学などの工学部を事例研究対象とする。学科を決め、その科目内容についてシラバスなどを調査し、工業高校の科目内容との対応関係を検討する。 なお、工業高校を卒業して、実習助手として勤務し、2部の大学等に通いながら教員免許状を取得して、教諭になる事例がかなり存在する。そのケースも含め検討する。また、工業教員を長く務められたOBまたはベテラン教員の方々から、近年の若い工業科教員の問題・課題を聞き取り調査する。これらを総合的に総括して、工業科教員養成制度の具体的改善方策をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、今回の調査では学校現場の情報管理が強められているのか、調査票の記述内容が解りにくいものがかなりあった。また、教育課程の提供が少なかった。そのため、改めて回答を求めたり、確認をしたりする必要が生じ、時間と手数が予期した以上に取られることになった。また、学校毎の特色を出すために教育課程を相当程度に複雑化している学校がかなりある。こうした事情が、作業に影響を及ぼしている。 具体的には、教育課程の集計・分析、工業技術基礎の集計・分析、各学科の実習と課題研究の内容等の集計・分析、製図の集計・分析の作業が遅れている。これらの作業は研究分担者ならびに研究協力者に配分して行っているが、未完了のため、作業に対する謝金等の使用を遅らせ、次年度使用額を生じさせた。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の実習内容等の集計・分析作業を鋭意進め、報告書の印刷・完成を目指す。その執筆者に対する謝金等の支出と印刷費および回答校への配布費用の支出を確実に行う。また、研究成果の学会等での発表を随時行う。そのための出張にも予算執行を行う。特に、研究協力者に対する支出を鋭意行う。さらに、学会誌などへの論文投稿も積極的に行うので、その投稿料も必要に応じて支出する所存である。 一方、工業科教員養成の問題について前年度から調査を部分的に始めているが、今年度は本格的に資料収集と特色ある教員養成実践を行っている大学に実地調査を行う。八戸工業大学、日本工業大学など数大学を予定している。そのための旅費の使用を考えている。
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