国や自治体の河川に関する組織や資料館を訪問し、昨年に引き続き、教育的価値の高い古写真の所在確認を行った。また、収集した古写真を選定・加工し、展示や教材を開発した。 新たな写真として、河川の氾濫による被害や復旧作業、堰止や閘門の工事、水遊びや漁撈、舟運等の日常の水辺での人々の営みを収めた写真が確認でき、写真選定の基準になると考えられた人物、家屋や公共物、ランドマーク等、およびメタデータを含むものを中心に収集した。 まとまった枚数が得られ、複数のテーマで整理ができた埼玉県と東京都の古写真を素材として展示および教材を開発した。埼玉県の協力により収集できた古写真については、メタデータをもとに説明のキャプションを加え、「平成30年度川の再生交流会」において「昔の川の風景ミニ写真ギャラリー」を設け、44点の写真をパネル展示として公開した。東京都土木技術支援・人材育成センターおよび東京都杉並区立井荻小学校の協力により収集できた古写真については、デジタル教材「和田堀風致地区・善福寺風致地区『古写真アーカイブ』」を作成し、和田堀27点、善福寺103点、合計130点を格納した。場所から探す(善福寺風致地区と和田堀風致地区のエリア詳細マップ)、年代から探す(昭和8年から昭和43年まで)の2つの写真選定画面と個々の写真の閲覧画面で構成した。 パネル展示では、閲覧者同士で写し込まれている事物を確認し合う、水害の経験を語る等、写真が過去の状況を想起させることや閲覧者の会話を促すことが確認された。また、多くの来場者が立ち止まり、惹きつける要素があることも確かめられた。デジタル教材については、地域の河川や暮らしの変遷をテーマにした学習に役立ち、学習課題を補完・発展できる可能性が示唆された。一方、活用を想定した上での新たな表示形式、さらなる聞き取りによる解説情報の充実の可能性等が指摘された。
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