研究課題/領域番号 |
15K00968
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
古田 悦子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (40422563)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線教育 / 放射線測定器 / プラスチックシンチレータ / ベータ線の定性 / 水の簡易測定 |
研究実績の概要 |
教職を目指す大学生向け、放射線教育用実習教材の開発を目的としている。このため、放射線種の違いを目に見える形にするための方法を模索してきた。平成28年度には、下記の実験道具を組み立て、その一部の測定を以下の通り実施した。①画像化のためのMPPCモジュールキットの最終組立と実践、②放射線種の違いを理解するためのスペクトロメーターの組み立てと実践、③放射線源(チェッキングソースおよび鉱石)の購入、④「水」測定系作成のためのシンチレータ容器の加工と遮光容器の作成、および実測。 ①は、2個のMPPCを備えたキットを購入し、電源、ケーブル全てを組み立てた。これを測定するためのカウンターに繋ぎ、カウントを試みたが、サーベイメータに反応する③の鉱石試料であっても、全くカウントが取れず「微細構造を高感度で測定可能」といううたい文句通りにはいかなかった。相当に強い放射線源が必要であり、実践的ではないと判断した。 ②では昨年度の「分解能の低さ」を克服すべく、無機シンチレータGSO(およびGPS)を購入し、有機シンチレータと比較検討した。Bi-207の内部転換電子の測定では、それぞれに異なるスペクトルが得られたものの、どちらも完璧に4本を同定できることはなかった。なお、GPSは状態の思わしいものが入手できず、企業より借り受けて測定を試みたが、良い結果は得られなかった。以上の結果から、取扱いの容易な有機シンチレータを用い、Pm, Tl, Co, Cl, Sr, Csなどの核種のベータ線エンドポイントを求めた。 ④は、有機シンチレータを用いた「容器」を20個作成し、かつ、光電子増倍管やMCAなどの測定計を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPPCによる画像化に一番力を入れたものの、実現できていない。(株)浜ホトによると、更に高感度のモジュールがあるとのことであるが、慎重に検討したい。一方、ベータ線スペクトロメーターは、有機シンチレータを用いた種々のチェッキングソースの測定により、検量線は得られ、定性可能であった。この結果は、国際会議、国内学会における「放射線教育」セッションで発表した。実際のアプリケーションとしても適切なものが見つかり、今後学会発表の予定である。「水」測定の容器および測定系を入れた遮光容器の遮蔽効果が低く、自然計数が極めて高く、低レベルの放射能は測定できなかった。遮蔽容器を検討するとともに、次年度は、容器も改良する必要があるが、各所での発表は概ね期待する声が得られている。 学会発表等は、教育セッションを設けている国際会議も含め、積極的にベータ線測定と教育(効果)について、発表を行ってきた。相応の理解が得られ、有効な参加であった。また、国内学会では、同様の考えを持つ諸先生と情報交換が行え、進捗に繋がった。
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今後の研究の推進方策 |
1. ベータ線スペクトロメーターの実地試験を試み、学会発表を行う。 2. 「水」測定系作成のための有機シンチレータ容器の改良を行うと共に、遮光容器を作成して一体型とし、さらに遮蔽について検討し、教育現場での使用を試みる。 上記結果まとめ、子供に教える立場となる大学生への教育の充実を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
・「水」測定系のプラスチックシンチレータ容器の発注が間に合わなかったため、および、次年度にまとめて、「水」測定系確率のために使用したいため ・MPPC(画像化の)検討に時間を要するため(前年度のように、結局使えない物に、消費することが無いよう、慎重に検討する。)
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次年度使用額の使用計画 |
・「水」測定系のための、遮蔽効果と遮光効果を兼ね備えた一体型容器の作成 ・「水」のサンプリング(おそらく、福島近郊) ・測定系を使用した実習の結果発表(学会発表)
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