持続可能な開発のための教育(ESD)推進のための効果的な地域ネットワーク形成のための要件を明らかにするため、2005年に世界で初めて認定された仙台広域圏と岡山のESD地域拠点(Regional Centres of Expertise: RCEs)について現地ヒアリング調査を行うとともに、RCE北九州等の文献調査等を行った。また、その後に設けられた文部科学省ESDコンソーシアムや環境省、文科省が主導して設けられたESD推進ネットワーク等について分析し、RCEがこれまで果たしてきた役割を明らかにするとともに、その役割の変化について考察した。 RCEは、国連大学が提唱し、2005年6月に世界で初めて認定された地域におけるESD推進のための仕組みであり、大学や学校、地方自治体、企業、市民団体等のESDに関わる地域のステークホルダーが知識や情報・経験を交流するための場を形成することを目的としている。このような仕組みは、2005年時点では世界的にも存在しなかったため、ESD推進のための革新的な仕組みとして世界的に普及が進んだ。 日本では、その後2008年にユネスコスクール制度、ユネスコスクールを支援するためのユネスコスクール支援大学間ネットワーク制度が設立され、また、2014年からは地域におけるESDを推進するためのESDコンソーシアム制度が、2016年度からはESD活動支援センター、地域ESD推進拠点等からなるESD推進ネットワーク制度が導入された。そのため、当初ESD推進に大きな役割を果たしたRCEの意義が薄れていった。ヒアリング結果からは、それらの仕組みの整備に至る基盤としてのRCEの役割を明らかにするとともに、RCEが今後果たすべき役割として、160に及ぶ世界のRCEとの経験の交流のような、他のESD推進の仕組みが持たない機能を重視するよう見直しを行う必要性が提案された。
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