研究課題/領域番号 |
15K00978
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
山本 智一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (70584572)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 科学的な論証スキル / 科学教育 / 理科教育 / 教師教育 / 小学校教員 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,科学的な論証スキルを育成するプログラム試案を修正し,実践授業に本格的に導入する段階として,3つのフェーズによって研究を行った。 第4フェーズとして,平成27年度のプログラム試案の評価と改善を行った。理科・科学教育関連の国際学会・国内学会に参加したり,連携協力者や理科教育関連の研究者から研究に関する助言を受けたりして,アーギュメントに関する最新の研究から,プログラムを補強するための情報収集を行った。ここで得た知見を活用して,海外の研究を援用したプログラムの活動を構成するとともに,山本ら(2013)が小学校児童を対象として授業を行う際に導入した,12の教授方略によるプログラムを開発し,小学校の現職教師教育に適用した。 第5フェーズは改善プログラムの本格的な導入として, 2016 年4 月~7月にかけて,3 回の異なる場面(現職教師を対象とした大学院の授業,及び小学校理科授業の研修会)で改善プログラムを実施した。対象受講者はのべ45 名であった。現職教員が科学的説明を構成する能力の実態を明らかにするために,プログラムの前後において,論証スキルに有意な変容が見られるかどうかを調査した。 さらに第6フェーズとしては,導入したプログラムの評価・改善を行った。実践中に利用したワークシート等を分析し,改善点を検討した。その際,理科・科学教育に関する学会,公開研究会,現職教員の研修会や自然科学系博物館等を利用して,科学的な論証スキル育成が可能なコンテンツに関する情報を収集した。 これらの研究成果に関して,現職教員が科学的説明を構成する能力の実態については,日本理科教育学会の学術誌『理科教育学研究57(1)』において公表するとともに,本格的に導入したプログラムの概要と効果については,日本理科教育学会全国大会(長野),日本科学教育学会年会(大分)で口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小学校教員を対象とした科学的な論証スキルを育成するプログラム開発について,次の3点からおおむね順調であると判断した。 第1に,プログラム改善の面からは,理科・科学教育関連の学会に参加しつつ,連携協力者や理科教育関係の研究者から助言を受けながら,国内外の新たな研究動向を調査し,プログラムの改善に生かすことができたことである。現職教員が科学的説明を構成する能力を育成するプログラム開発を推進することができた。 第2に,改善プログラムの本格的な導入として, 3 回の異なる場面(現職教師を対象とした大学院の授業,及び小学校理科授業の研修会)で改善プログラムを実施したことである。現職教員が科学的説明を構成する能力の実態を明らかにするために,プログラムの前後における論証スキルを調査し,改善プログラムを評価するためのデータを得ることができた。 第3に,現職教員の実態調査の結果を学術論文として公表するとともに,2回の学会発表により,本格的に導入したプログラムの概要と効果について,具体的に発信できたことである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,科学的な論証スキルを育成するプログラム開発の総括段階として,プログラムを評価し,研究成果を公表する。 最終的な第7フェーズとして,平成28年度に実施したプログラムの評価と成果を学術雑誌に投稿するとともに,国内外の学会において,プログラムを受講した現職教員の意識変容に関する調査結果を公表する。さらに,プログラムの課題を明らかにして発展をめざすために,科学の論争的課題や環境問題等,科学的な論証を教材化するためのコンテンツ調査を重ねる予定である。具体的には,日本理科教育学会の学術誌『理科教育学研究58(1)』への投稿,及び,European Science Education Research Association (ESERA) 2017,日本科学教育学会年会(香川)での成果発表と情報収集を行う。さらに,国内外の科学・自然史博物館にて,科学的論証のための教材コンテンツの情報を収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,学術誌『理科教育学研究58(1)』への成果公表における追加ページ代金(6ページ分120千円)を予定していたが,採録が平成29年度となったため,これを繰り越した。また,情報収集において,国立科学博物館,日本科学未来館等の見学(計約140千円)を予定していたが,これをH29年度に延期したことにより,合計約260千円を次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品としては,小学校理科の教材研究を行うために,実験器具類,関係図書を購入予定である。また,情報整理のメディア,ファイル類等が必要であり,計80千円を予定している。海外旅費としては,成果発表と情報収集のためにESERA2017(アイルランド)への参加及び大英自然史博物館(UK)の見学(380千円)を実施する。国内旅費では,宮崎大学教育学部の他,国立科学博物館,日本科学未来館等に年間4回程度を計画するとともに,神戸大学で年間2回の研究打ち合わせを行う(計250千円)。また,成果発表として,日本科学教育学会年会(香川)に参加する(50千円)。これらを含め,国内外旅費680千円を計上する。謝金として,データ分析補助に計20千円,その他としては,学会参加登録費(60千円)及び成果物の追加ページ代金(120千円)などに計180千円の使用を予定している。
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