中学校の技術科における3Dプリンタの活用方法や新たな教育手法の開発に取り組んだ。3Dプリンタを使って1クラスの生徒作品すべてを出力するためには長時間を要する問題に対して,平成28~29年度の研究では3Dプリンタの台数を増やすことによる解決を目指した。しかし3Dプリンタのノズル詰まりや樹脂送り機構の滑り,樹脂溶融温度の不良,その他の故障が頻発した。このような故障が発生すると,中学校現場において教師が臨機応変に修理を行うことは難しく,授業実施上の重大な支障になることが分かった。 そこで平成30年度は同価格帯で最新型の3Dプリンタ1台を導入し,旧機種と比較した。その結果,故障発生頻度は大幅に改善されていることが分かった。またドローン用のφ100mm 2翼プロペラを試作したところ,出力方向を工夫することによって,良好な精度で製作できることが分かった。しかしながら3Dプリンタの出力時間が学校現場での活用を難しくしていることには変わらない。そのため学校現場におけるデジタルファブリケーション機器として3Dプリンタよりレーザーカッターの方が,出力時間が圧倒的に短いことから,使いやすいと推測された。そこで鳴門教育大学にあるレーザーカッターを使ってt0.5mmアクリル板をカットし,アイロンで加熱し翼型に加工する方法でもドローン用のφ100mm 2翼プロペラを試作した。3Dプリンタ製とレーザーカッター製のプロペラを比較すると,3Dプリンタ製は翼断面の厚さの変化を忠実に製作できる点でレーザーカッター製より優れているが,プロペラ表面に樹脂の積層に伴う段差を生じる点や出力に長時間を要する点で劣っている。 以上の結果,3Dプリンタが出力に長時間を要する欠点を,複数の3Dプリンタ配置によって解決しようとしても,故障対応やメンテナンス等で教員の負担が避けられないことを考慮するとやや難しいとの結論に至った。
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