研究課題/領域番号 |
15K00987
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研究機関 | 秀明大学 |
研究代表者 |
田中 元 秀明大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40512942)
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研究分担者 |
鈴木 哲也 東京未来大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50566750)
小林 久美 東京未来大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40343686)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学リテラシー / 科学教育 / 理科教育 / 理科教員 / 教員養成 / コンセプトマップ / ネットワークグラフ |
研究実績の概要 |
理科分野における各種の教科書およびそれらの周辺資料や理科教員または理科教員養成課程に在籍する大学生の概念を調査する過程で、これらをビッグデータとして構築するために必要なツールを複数開発し、効果的に運用されることを確認した。この件に関し、以下に2つの発表例を挙げる。
例1 大学教育系学部中等教員養成課程新入生(2014,2015 年度)(約50名)を対象にコンセプトマッピングを行ってもらい、化学分野において,大学入学の時点で学生が最も強く抱くイメージは「実験」に関するものであることを明らかにした(『日本科学教育学会年会論文集』査読無,Vol.39(2015),353-354「大学入学者(教育系学部・理科)が抱く「化学」のイメージ-用語のマッピングを通して -」田中元,鈴木哲也)。実験離れが指摘される世代においてさえ、中等教育における化学が最も重視する「粒子概念」「周期表」よりも「実験」に関するイメージが大きなウエイトを占める。この事実は、抽象的な概念をより巧みに効果的に伝えるために「実験」テーマを開発・採択することが大きな意義をもつであろうことを示唆する。
例2 高校・大学教養課程における化学教科書を対照として、大学生の化学に対する意識を定量し、その変遷を追った(2016秀明大学紀要,59-80「コンセプトマップとその変遷を通じて読み取る学生の化学概念」田中 元,鈴木哲也)。テキストデータとマップの双方において共通する構造をもつネットワークグラフを構築し、これらの比較定量が可能となったことを示したものである。以降、科学リテラシーを研究するに当たって、そのリテラシーを与えようとする側(テキストデータ)の状況と受け取る側(マップ)のそれとを比較することができるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に向けて、以下の(A)-(D)の4つに向けてツールを完成させた。ビッグデータを構築し取り扱うためには、活字として印刷された資料(教科書類)や手描きされたコンセプトマップの電子化が大きな手間であったが、これらのツールを連動して運用することでこのステップは現実的な時間とコストの中で扱うことができると考えられる。2016年度以降、量的な処理を行うことで、物理・化学・生物・地学・理科教育にまたがるビッグデータを構築することができる。
(A)一つのコンセプトマップからネットワークグラフデータ(隣接行列)を得て、 (B)(A)で得たネットワークグラフデータの和集合として、総体としてのネットワークグラフデータを得る。 (C)概念間の共起ネットワークを効率的に得るために、OCRの前作業として教科書等のテキストデータを図版等から切り離して抽出する。 (D)(A),(B),(C)によって得られたネットワークグラフデータを定量・可視化する。
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今後の研究の推進方策 |
上記【現在までの進捗状況】にある通り、本研究において律速段階となっていた質的な問題はほぼ解決されたと見られる。今後は、以下のように量的な作業をこなす必要が高まるであろう。 (1)中等教育における理科分野の教科書以外の資料(教師用指導書、資料集、各大学に採択されている教科書、一般向けに市販される科学雑誌)から理科教員養成に関わると思われるものを選定し、データ化する。 (2)理科教員または理科教員養成課程に在籍する大学生の概念を、幅広く、継続的に調査する。 これらのうち、(1)に関しては、必要なマンパワーを共同研究者に限って求めるのでなく、学生アルバイトを雇用するなどして確保することを考えている。そのために並行して、資料のデータ化に必要なハードウェアをそろえる。(2)に関しては、コンセプトマップを用いることで従来より比較的効率的な作業が可能となると思われるが、さらにインターネットを活用したデータ収集等の工夫を考える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の申請時当初、データ解析用ハードウェアの購入を初年度に行うものとして計画したが、むしろ急がれるべきは解析に向けたソフトウェア購入・ツール開発であることが判明し、そちらに注力することとなった。そのためハードウェア(スキャナ、プリンタ、端末(PC、タブレット等))の購入は2016年度以降に行う。
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次年度使用額の使用計画 |
ハードウェアに関し、データ解析用環境の開発と整備を行う予定である。【今後の研究の推進方策 等】にて既述した通り、ビッグデータ構築に向けてマンパワーに依存するステップが避けて通れない。このステップを並行して効率的にこなすために、2016年度の予算をこの次年度使用額と合わせて費やし、人数に見合ったハードウェアをそろえる予定である。
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