1.湧水の水質調査資料を用いた教材の作成:2017年5月で野外観測および観測で得られた試料の水質分析を終えた。5月~7月にかけて、これらの結果をとりまとめ、学術雑誌に投稿するための図表作成を行った。さらに、図表を小学校5年生の「理科:流れる水の働き」において教材として利用できるように書き直した。水質の分析結果からわかったことは、半径5km以内に存在する3つの湧水の水質は、基盤地質の指標となる珪酸(SiO2)濃度には大きな違いが見られないにもかかわらず、pH、電気伝導度、硝酸態窒素濃度が、人間活動の増加する地域にある湧水ほど著しく高くなったことである。同時に行った雨水の分析結果から、最も人間活動の影響が小さい湧水では、硝酸態窒素は土壌で吸収され、pHは低いまま流出することがわかった。一方で、人間活動が大きくなる地域にある湧水では、水は中性からアルカリ性になり、主要イオン、硝酸態窒素が負荷されることが明らかになった。不思議なことに窒素と並ぶ富栄養化要素の1つであるリン酸態リンは、ほとんど検出されなかった。 2.小学校第5学年「理科」での授業実践:昨年度に引き続き、椙山女学園大学付属小学校にて、12月21日(木)に、第5学年3クラスの児童に対し、単元「流れる水の働き」のまとめとして、「身近にある川の始まり~水源の小学校、椙山小学校」と題し、同内容の授業を3回繰り返しで行った。内容は、①椙山小学校の地形は谷間(谷津)であり、かつては川の源流があったことに気付く、②椙山小学校の校庭のビオトープに見られる湧水は名古屋市の都市河川の山崎川の水源である、③亜硝酸態窒素の比色分析を通じて椙山小学校の湧水は人間活動の影響を強く受けていることを理解する、④水源を持つ小学校として、ビオトープと湧水の保全にできることは何かを考える、という4部構成で行った。
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