研究課題/領域番号 |
15K01012
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三石 大 東北大学, 教育情報基盤センター, 准教授 (50305306)
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研究分担者 |
大河 雄一 東北大学, 教育情報学研究部, 助教 (60361177)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教授学習支援システム / 教授設計プロセスモデル / 成長型教授設計プロセス / 3段階学習プロセスモデル / eラーニング / ブレンディッドラーニング |
研究実績の概要 |
本研究では、我々のこれまでの研究成果である成長型教授設計プロセスモデルとしてのダブルループ教授設計プロセスモデルと、授業中の教授活動と授業後のeラーニングによる復習活動の相互連携による効果的な学習を促進する3段階学習プロセスを統合することで、学生の主体的な学習の促進と教師による継続的な授業改善による持続可能な教授・学習プロセスモデルを開発し、そのための教授・学習システムの基本設計を明らかにする。 2年目となる平成28年度では、先ず、昨年度に引き続き、LMS上での復習状況や学習者の学習意欲、学習結果に対する印象の詳細な分析を行った。その結果、授業中の学習内容に対する解説に加えて学習者の興味関心を喚起するとともに、演習課題等、学習内容の定着を確認可能な復習課題を提示することで、復習課題以外にも学習者自身の自発的な復習を十分誘発でき、これによる学習効果を実感できていることを確認した。 また、語学教育の授業を対象に、自発的な復習による継続的な学習手法として授業内容と密接に連携したマイクロラーニングによる学習手法を提案し、その実現のために、昨今の学習者に広く浸透する携帯情報端末であるスマートフォンを利用し、短時間の空き時間を利用した断続的な学習を可能とするシステムと、そこで提供する教材を設計、実装し、来年度からの実証実験が可能な環境を整備した。 さらに本年度は、学習の進捗に伴う教員と学習者とのコミュニケーションによる学習動機付けへの効果を確認すべく、授業時間外に非同期に交わされたコミュニケーション内容の分析を新たに開始した。特に、単純な統計処理が難しいコミュニケーション中の言語データを文脈に沿って適切に分析できるよう、2者間でのシャトル型コミュニケーションの質的分析を可能とする新たな分析手法を提案し、開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、複数の実授業の観察に基づき、実践的な教授・学習プロセスモデルを明らかにするとともに、そのための教授・学習システムの基本設計を明らかにするを目的としているが、初年度である平成27年度は、授業内容の観察やその分析に予想以上に時間を要し、研究計画に対する遅れが懸念される状態にあった。 しかしながら2年目となる平成28年度は、初年度の観察結果の分析を進め、我々の提案するダブルループ教授設計プロセスモデルに基づき授業内容を改善、高度化するとともに、3段階学習プロセスモデルに基づき実際の授業を実施し、授業内容と密接に連携した復習課題を提供することで、学習者の自発的な学習を促進できることを明らかにできた。 また、3段階学習プロセスモデルによる継続的な学習として語学教育を例にとり、マイクロラーニングに基づく復習手法を提案するとともに、そのための学習環境として、スマートフォンを利用した断続的な学習を可能とするシステムと学習コンテツのプロトタイプを実装し、来年度からの実証実験の実施と、これによる学習履歴の分析が可能な環境を整備することができた。 さらに本年度は、継続的、持続的な学習に必要となる教員と学習者との間で交わされるコミュニケーションの学習動機付けへの効果についても明らかにすべく調査を開始し、2者間で交わされるシャトル型コミュニケーションにおいてどのような内容をどのように交わしたのか、その文脈に沿った質的な分析を可能とする新しい分析手法を提案し、その基本仕様を明らかにするなど、新たな成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、これまで、持続的な学習に必要となる自発的な学習を促進するための動機付け要因の一部を明らかにするとともに、持続可能な学習方法として、マイクロラーニングに基づく断続的な学習を可能とする学習環境を提案し、そのプロトタイプシステムを実装してきた。 また、教員と学習者とのコミュニケーションによる学習動機付けへの効果を確認すべく、シャトル型コミュニケーションの質的分析手法についても開発を進めてきた。 そこで、最終年度である平成29年度は、昨年度に実装したマイクロラーニングに基づく学習環境を利用した実証実験を行い、その学習履歴を分析することで、学習者の学習意欲の維持、向上のための動機付け要因の詳細を探るとともに、学習意欲の低下を招く原因についても分析し、その即時的対応と次回の授業実施に向けた授業計画改善、高度化のプロセスを明らかにする。また、更なる授業の観察、分析を進め、学習プロセスの観点から教授設計プロセスの中で確認すべき事項を明らかにする。 その上で、これらの成果をもとに、3段階学習プロセスモデルの中で確認される学習状況に基づく教授設計の改善、高度化手法を明らかにし、本研究で実現を目指す、3段階学習プロセスモデルとダブルループ教授設計プロセスモデルとの統合による持続可能な教授・学習プロセスのモデル化を行うとともに、提案プロセスモデルに基づく具体的な教授・学習活動の実施にあたって必要な支援手法を明らかにし、そのための教授・学習支援システムの基本設計を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度計画していた学習履歴の分析や教員、学生間での対話内容等のデータ分析に際し、分析手法そのものの開発が必要であることが確認され、その開発を行っていたため、結果的に分析作業を依頼予定としていた研究補助費や分析結果を記録するためのメディア代等が残額として発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に開発した分析手法に基づき、次年度に取得予定のデータとあわせ、本年度に取得したデータの分析を行うことを計画している。このため、次年度請求額に加え、データ分析作業のための補助者の雇用、ならびに分析結果の記録のためのメディア等の購入を予定している。
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