研究課題/領域番号 |
15K01014
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
日高 貴志夫 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (90642786)
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研究分担者 |
若山 将実 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 准教授(移行) (00632332)
小林 正史 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授(移行) (50225538)
俵 希實 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授(移行) (60506921)
米田 佐紀子 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授(移行) (70208768)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キャリア教育 / グローバルビジネス / 現地人採用者 / 日本人上司 / ビジネスを通した異文化理解 |
研究実績の概要 |
本研究は、北陸学院大学のMIP2のプラットフォームを継続活用し、グローバルな人材教育プログラム構築を目的としている。MIP2のプラットフォームは、最低1回の海外ビジネス経験者の登壇を義務付けているが、グローバルに活躍している海外勤務者の授業参加が困難であることが判明した。そこで、海外ビジネス経験者で国内に勤務している会社員に変更して継続している。平成27年度は日立グループの海外勤務者を現地訪問してビデオの前撮りを用いて授業を行ったが、学生からの質疑に対してその場での回答が困難であった。そこで、平成28年度は日系企業で3年間のジョブキャリアのある中国人留学生、及び日立グループの研究者の2名に登壇して頂いた。中国の『一人っ子政策』下での次女としての生い立ち及び辺境地域での教育環境の不備による学業継続の難しさ、その後の日系企業での営業経験を通じて日本人の勤勉さに刺激されて日本留学を決意したことなど、特に中国人採用者から見た日本人上司に対する視点を提示することが出来た。また、日立グループの研究者からは開発段階での国際調達に関する課題提示があり、日本人が常識とするアタリマエの高品質が海外調達では困難であることや、商習慣の違いから生じる支払い方法及び期限厳守の考え方の相異などを紹介した。見る事と聞く事の大差を、学生達が習得できた事による充実感および達成感がアクションシートを用いた振り返りから確認できた。特に、日立グループの研究者の課題は研究開発段階の国際調達で開発要素が多いため、学生に馴染みのない専門用語や高水準の技術が含まれたため、学生達への精神的ストレスが高くなった。しかし、高いハードルをクリアした学生達の達成感が大きいことが判明し、予想以上の成果が上がったと考えている。平成28年度の成果は、日本産業技術教育学会の東北支部大会での発表1件および北陸学院大学の紀要投稿1件を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北陸学院大学のMIPは「1.地域の企業、2.グローバル企業、3.インターンシップ」の3種類が学生の学年進行に合わせて段階的に進んでゆくシステムになっている。MIP2は、MIP1で地域の企業からの課題を解決した学生達のステップアップとして、その次のグローバル企業にステップアップする。すなわち、グローバル企業からの課題提示を学生達が解決してゆく段階に位置付けられている。MIP2を通して我々が得た反省点は、下記の二項目である。まず、第一線で活躍しているビジネスマンに登壇して頂くことがとても難しい事だということであった。地域におけるビジネスマンの登壇は、地域に密着した企業であれば登壇が可能であるが、グローバル企業で働くエリートビジネスマンが海外から地方に登壇しに行くことは不可能に近い。また、テレビ会議システムを利用した登壇でも、国が異なると時差が発生することがあるために、週日の限定された授業時間に参加して頂く事が困難になってくる。次に、スカイプ等ICTを活用した授業の展開では、接続及び通話中の不規則なフリーズがお互いのストレスになりやすいことが挙げられる。限られた授業時間内に、その日の授業内容を完全に終わらせる為には、教育機器への要求として、シームレスな通話を可能としたICT機器の登場が強く望まれる。テレビ会議システムを利用している登壇者にとって、仕事の合間に入れた授業時間の延長はあり得ない事であるため、こちらで代替案を用意する必要がある。授業中には発生しなかったが、授業準備の段階でスカイプの通信不良により、スマホを用いてスピーカーフォンの状態で対応したことがあった。このように、常に代案を用意して物事を進めてゆくことが大切であることに気付いた。登壇を義務付けた授業では、地域の企業と比較して、海外からの招待もしくはテレビ会議システムを利用したグローバル授業の成立は閾値が高い。
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今後の研究の推進方策 |
今年度が本研究の最終年度になるため、昨年度までに体得した事項を応用しつつ、取り組みを継続してゆく予定である。グローバルビジネスでは、海外支店とのテレビ会議を用いた緊密な情報共有が大切である。その会議では、限られた時間を有効に活用して、要領の良い資料作成能力と簡潔で分かり易い話術が要求される。FSPをベースとしたMIPは、優れたプラットフォームであるが、要領の良い資料作成能力と簡潔で分かり易い話術については改良の余地があると考えられる。従来の通りのPBLを実施するため、登壇者に課題を提供してもらう。その回答を、テレビ会議への事前資料として提出してもらう。提出物は、A4サイズの会議資料1枚に限定し、起承転結をその中に盛り込む説明資料作成を授業の中に導入するよう試みる。また、テレビ会議を想定したプレゼンを行う。プレゼンでは時間管理が重要課題であるため、与えられた制限時間内に簡潔に纏める訓練を行う。そのために、中間報告会と最終報告会を設けて、学生達の報告が時間内に終わるようにスキルアップを図って行きたい。学生達の振り返りでは経産省が出しているプログレスシートを用いてきたが、評価が三段階であるため、学生達の進捗度が判別しにくかった。そこで、プログレスシートに中間段階を新たに設けて、進捗度が判別しやすくする予定である。他に、ビジネスを円滑に実施する手法として、PDCA(Plan,Do,Check,Action)サイクルを円滑に進めてゆくことが提案されている。立案した内容を実施して行く過程で困難な局面にぶつかることがあるが、危険予測と回避の為の代替案を事前に作成しておく事も重要であると考えている。企業が生き残りを賭けた海外展開を中国から東南アジアへ拡大している現状を踏まえて、グローバル即戦力となる学生の教育に力を注いで行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に計画していた中国での調査予定であった大学でのグローバルアンケート調査が、先方の都合で本年度に延期されたため予算残となった。アンケート調査については、本年度における山形大学の倫理委員会での審査を経たのち実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
グローバルアンケートは吉林大学および東北電力大学での実施を予定している。但し、前記大学が中国東北部に偏っているとの指摘があり、中国南西部の大学でのアンケート調査について打診している。現在は、回答を待っている状態である。
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