本研究課題では、盲ろう者・聴覚障害者の歌唱支援のための触覚フィードバック音声ピッチ制御システムの実用化を目的とした研究をおこなった。 平成27年度と28年度においては、従来用いていた試作の触覚ディスプレイを用いたシステムでは実用化が難しいことから市販の触覚ディスプレイを用いたシステムを新たに開発し、その評価をおこなった。最終年度の平成29年度においては、本システムを用いた訓練効果の検証と本システムの普及に向けたシステムの改修をおこなった。 本研究課題の成果は次のようになる。市販の触覚ディスプレイを用いたシステムの開発については、従来の刺激ピンが縦16行×横4列の試作の触覚ディスプレイを用いたシステムから、刺激ピンが縦32行×横48列の市販の触覚ディスプレイを用いた新しいシステムに変更した。新システムでは、縦方向における音声ピッチ(声の高さ)の提示に関しては1つの刺激ピン(1行)に半音を割り当て、12行で1オクターブを割り当てる設定で十分効果的に利用可能であることが確認された。横方向における音声ピッチ提示のスクロール速度においては、1秒間に4列の速さでの右スクロールでの十分利用可能なことが繰り返し行う訓練効果の検証の結果から確認された。さらに、本システムの普及に向けて、市販の触覚ディスプレイの専用ドライバ経由での駆動での不安定さを解消するために、専用ドライバを介さずに本システムから市販の触覚ディスプレイを直接駆動する方式へと変更するためにシステムを改修した。 本研究課題の結果、盲ろう者・聴覚障害者の歌唱支援のための触覚フィードバック音声ピッチ制御システムの実用化が大きく進展したと考えられる。今後は、本システムの教育への応用に向けた研究を本学に在籍する盲ろう学生等を対象としておこなっていく計画である。
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