研究課題/領域番号 |
15K01020
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
後藤 康志 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (40410261)
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研究分担者 |
生田 孝至 岐阜女子大学, 文化創造学部, 教授 (20018823)
黒上 晴夫 関西大学, 総合情報学部, 教授 (20215081)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 批判的思考 / ルーブリック / 論理的思考 / メタ認知 / 高等教育 |
研究実績の概要 |
本研究では,批判的思考の傾向性が高い学習者とそうでない学習者の問題解決過程の違いを明らかにし,その違いを批判的思考ルーブリックによって可視化するとともに,学習者にフィードバックし,メタ認知的活動に組み入れる思考力育成プログラムの開発を目的としている。 「日本は外賛成・反対の立場でトゥールミンモデル(根拠,主張,論拠,裏付け,反証,強度)を作成してもらった。その後,30分のジグソー活動を行った。その後,批判的思考ルーブリックによる自己評価と,トゥールミンモデルの感想を尋ねた。 批判的思考ルーブリックによる達成度の自己評価を求めたところ,「自分の意見と反する資料も平等に評価した」「情報が誰から送られたものかに注意を払った」,「情報の矛盾や欠落に注意を払った」,「反対の立場からの情報を想定した」については90 %以上の学生が達成した。「情報がいつ頃作成されたものか注意を払った」「情報が誰に向けて送られたものかに注意を払った」については70%の学生が達成した。これらに較べ,「書き手の論旨の飛躍に注意を払った」「情報が誰から送られたものかに注意を払った。」の到達度は低かった。 他方,メタ認知的活動においては,「日々の生活で自分は,情報を反証することなく,鵜呑みにしてしまっている自分に気づいた」,「情報の根拠を反証することで,情報の信頼性を正しく判断することができる」,「トウールミンモデルを使うことで,問題のポイントに焦点化しやすくなる」,「主張や根拠を書くのに較べて,反証を書くのに時間がかかることからみると,物事を多様な視点から深く考えることが不得手だと気づいた」といった感想があった。批判的思考の傾向性については,批判的思考傾向性尺度を用い,傾向性高群と低群を分離し,比較したが,統計的に有意な差は得られなかったため,今後サンプルサイズを大きくして検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
批判的思考力育成プログラムについては,知識構成型ジグソーによる議論,批判的思考ルーブリックによる到達度の自己評価,自己評価の妥当性を確認するためのトウールミンモデルによる論理構造の確認を組み合わせ,メタ認知的活動を行わせることとした。一方,領域固有の知識の多寡が批判的思考に与える影響が考えられることが明らかになった。 批判的思考の傾向性については,サンプルサイズが小さいためか,傾向性高群と傾向性低群に統計的に有意な差が見られなかった。知識構成型ジグソーにおいては,他者との交流を積極的に行うかといったパーソナリティも影響することが考えられ,この点は計画時にも想定していたことである。
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今後の研究の推進方策 |
批判的思考力育成プログラムについては,知識構成型ジグソーで取り扱う内容の領域固有性(例えば「外国人労働者の受け入れ」であれば,その領域固有の知識の多寡)について,コンセプトマッピングによって測定し,領域固有知識が高い群と低い群における比較を行いたい。 また,批判的思考傾向性の高低によって批判的思考ルーブリックによる達成度の自己評価について統計的に有意な差が見られなかったことから,サンプルサイズを大きくするともに,パーソナリティを個人差変数に組み入れた比較検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会のための英文校閲の謝金の支出について,予定していた期日までに作成が終わらなかっため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会のための英文校閲の謝金として執行する。
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