本研究の目的は,眼鏡型ウェアラブルデバイス(スマートグラス等)を用いた次世代のICT活用防災学習を実現し,その効果を実践的に検証することである. 平成29年度を“検証期”と位置づけ,防災教育実践(避難訓練等)を実施するとともに,実践準備および実践を通じて課題を発見し,その改善に向けてシステムを機能拡張した. 1.南海トラフ巨大地震に伴う津波からの避難訓練シナリオを設計し,スマートグラスとタブレットに対応するシステム(Google Map上での簡易型津波シミュレーション)のデバイスごとの有効性を検証した.シナリオでは,避難開始が遅れた徳島市沿岸部の住民(大学生)を想定して,訓練参加者に最寄りの津波避難ビルまでの疾走(短距離)を要求した.スマートグラスへのシミュレーション提示がタブレットよりも視認性が高く,避難訓練の緊迫感を高めるとの結果を得られたが,シミュレーションの視認頻度は高くなく,疾走が困難という問題点も確認された. 2.スマートフォン活用型Head-Mounted Display(HMD)とAugmented Reality(AR)を組み合わせた避難訓練システムを徳島県南部沿岸地域の教育現場(小学校)に導入し,教員対象の避難指示訓練を実施した.訓練時の映像と避難指示(発話)を記録・共有できるリフレクション支援機能により,気づきが促進され,訓練効果が向上することがわかった. 3.簡易型津波シミュレーションを設定する負荷が高いことから(マップ上の小領域ごとに津波浸水深を手入力),防災オープンデータから小領域ごとの津波浸水深を取得し,シミュレーションに自動的に入力する機能を実装した.さらに,Google Earthによる3次元表現を取り入れた浸水状況の視覚的リアリティ向上,タブレットとゲーミフィケーションを組み合わせた学習意欲向上にも取り組んだ.
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