研究課題/領域番号 |
15K01029
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山地 弘起 長崎大学, 大学教育イノベーションセンター, 教授 (10220360)
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研究分担者 |
三隅 友子 徳島大学, 国際センター, 教授 (20325244)
田中 東子 大妻女子大学, 文学部, 准教授 (40339619)
谷 美奈 帝塚山大学, 全学教育開発センター, 准教授 (60582129)
保崎 則雄 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70221562)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コミュニケーション教育 / 大学生 / 対人関係文化 / 社会情動的学習 / 批判的教育 |
研究実績の概要 |
今日、大学教育においてコミュニケーション力の向上が強く求められている。しかし、学生の対人関係文化を了解した上で、自他ともにケアできる真正な自己表現と機能的な対人調整をめざすコミュニケーション教育の試みはほとんど見られない。規範的なコミュニケーション技能の訓練ではなく、学生が日常の文化的習慣を自覚化しつつ自他ともにケアできる批判的・創造的なコミュニケーション様式を探ることは、多文化共生が必須の前提となっている現代社会において不可欠な学習活動である。 そこで本研究は、社会情動的学習(SEL)の枠組を踏まえて、①学生の対人関係文化の分析から教材化のシーズとなる事例を収集する、②国内外のSEL事例の展望をもとに参考事例の訪問調査を行う、③以上の成果を用いてワークショップ型のパイロット授業および正課内授業での実践研究を行う、④学生向けワークブックと教員用マニュアルを制作する、の4つの内容に取り組み、多文化共生時代にふさわしい新たなコミュニケーション教育の方法を開発することを目的とする。 平成27年度は、学生の対人関係文化の把握と国内のSEL実践事例の調査を開始した。学生の対人関係文化に関しては、メディア文化論や身体心理学等の各領域での知見を整理する一方、学生自身の視点からコミュニケーション葛藤を理解するために、自己表現のプロセスやライティング作品などを読み解く作業を行った。並行して、マインドフルネスやラボラトリー・メソッドなど、国内のSEL実践事例から本研究のテーマに関連したものに焦点を当て、授業内学習活動としての可能性を検討した。これらの成果の一部は、平成28年3月に行われた第22回京都大学大学教育研究フォーラムの参加者企画セッションにて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定されていた学生のフォーカスグループの組織が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、学生のフォーカスグループを組織してコミュニケーション葛藤の実際を継続的に把握していく。また、担当授業の一部や関心ある学生グループにおいて、パイロット的に短期(数回)の継続ワークショップを実施する。ここでは、学生による日常のコミュニケーション習慣の自覚化と相互吟味を促進し、新たな知識や技能を自らのコミュニケーション行為のもとで活用・構築することをめざす。 並行して、国内外のSEL実践事例から本研究のテーマに関連した事例を吟味し、訪問調査や教材資料等の分析から授業開発の参考に資する。 平成29年度には、前年度までの成果を踏まえて、半期の正課内授業でワークショップ型のコミュニケーション教育の実践研究を行う。学習評価においては、活動過程のドキュメンテーションとそのフィードバックを踏まえて評価ルーブリックを教員と学生が共同で作成し、総括評価は主に各学生の学習ポートフォリオの制作と省察に基づいて行う。 授業期間中には、研究分担者の間で定期的な遠隔カンファレンスを行い、必要な軌道修正を図る。とくに学習評価枠組の整備を焦点として取り上げ、4領域全体(身体・言語・メディア・異文化間の各コミュニケーション領域)に通じる授業設計の指針や学習評価の観点などを明確化する。 平成30年度には、正課内授業での実践研究を継続する一方で、ここまでの成果のまとめとして、学生向けワークブックと教員向けマニュアルを制作する。これらの教材資料は本研究での授業改善に用いるだけでなく、無料公開することで、一般の大学でのコミュニケーション教育に資することをめざす。また、大学教育関係者からのフィードバックを広く集め、更なる授業改善に結びつける。
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次年度使用額が生じた理由 |
学生の対人関係文化を探索的に調査するためのフォーカスグループが遅れているため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度早めにフォーカスグループ研究を開始する計画である。
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