研究課題/領域番号 |
15K01031
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
前村 公成 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (30398292)
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研究分担者 |
盛 真一郎 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (00620519)
又木 雄弘 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 特任講師 (10444902)
渡邊 睦 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (50325768)
新地 洋之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (60284874)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70237577)
蔵原 弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (70464469)
高尾 尊身 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80171411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 内視鏡外科 / 画像支援システム / 遠隔指導 / シュミレーター |
研究実績の概要 |
研究の目的は腹腔鏡技術を用いた胆道・膵切除後の安全で汎用性の高い臓器再建術を実現するために、胆道・膵に対する独自の腹腔鏡下消化管再建術専用の画像支援機構内蔵型訓練用シミュレーターを開発し、同技術を利用した双方向性遠隔指導システムの構築と、本技術を用いた訓練システムの体系化を構築することである。 これまでの研究・開発により腹腔鏡下胆道・膵消化管再建術専用の画像支援機構内蔵型指導・訓練用シミュレーターのプロトタイプ2機を用いて、両者のカメラ映像を双方向性に配信し、ライン接続された装置から同時にカメラ映像の送信と受信が可能なシステムを構築した。本年度は本装置を用いた仮想胆道・膵消化管再建モデルおよびトレーニングプログラムの作成・開発に取り組んだ。本装置の特色である画像合成ユニット装置(AVF-1002M)を用いた双方向性の腹腔鏡シミュレーターカメラ映像に対する最適な合成条件の探索では、双方向に良好な映像を配信し、相同性の高い視認環境の構築を試みた。一方で、実践的な動作における双方向の映像の視認性を検証すると、合成映像下での腹腔鏡操作においては、動作内容により視認性が著しく低下したり、送信映像と受診映像の判別が困難になることが明らかになったため、その対策について検証した。また、モニター映像だけでの動作追跡は容易ではなく、単純なプロトコルであっても映像だけでの追従では、腹腔鏡下操作の指導が困難であることも判明した。遠隔トレーニングを想定した実技指導プログラムを構築するためには、同時音声による動作状況の確認作業が必須であることが確認された。 我々が開発を進めている双方向性の合成画像を有するトレーニング用シミュレーターは、モニター映像の配信と受診を同一映像で視認しながら腹腔鏡操作が可能であり、内視鏡技術の指導とトレーニングを効率化できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した2機のシミュレーターのモニター映像を、画像合成ユニット装置を介して接続し、様々な条件での双方向性での視認状況の検証と最適条件について探索した。静止状態でのモニター映像は良好な視認性が確認された。実際にシミュレーター内で複数の鉗子操作を行い、画像の視認性と術者判別の確認について検証した。静止時の映像に比べ、動作中の映像は画像合成における配信映像と受診映像の最適な重層割合が変化することが判明し、視認性に大きな差が生じることがわかった。これらの結果より、シミュレーター内での動作環境においては、各操作について独自の条件設定が必要であると考えられた。 BIOTEKTURE臓器モデルを用いた臓器再建再現用の疑似モデルの作成を試み、腸管腸管吻合モデル、胆管空腸吻合モデル、膵腸間吻合モデル、膵胃吻合モデルを構築した。可能な限り実際の腹腔鏡手術に近似させるため、吻合法ごとにシミュレーター内の臓器モデルの配置とモニターカメラの位置設定を様々な条件で検証し、同時に操作毎の鉗子挿入位置の設定条件も検証した。 本システムを用いた腹腔鏡手技指導教育プログラム試作版を考案し、実効性の検証を行った。現段階では訓練シミュレータの動作映像による視認性の問題が解決されていないため、単純化されたプロトコルでのプログラム開発に限定した。 当初の計画ではインターネット回線を用いた画像情報の双方向性伝達を計画していたが、回線仕様のためのプロトコル作成に着手できていない。今後さらに音声を含めた双方向の情報共有が必要となることが考えられるため、ネット接続のソフトウェア選択やシステム構築のための手法について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
腹腔鏡下胆道・膵消化管再建術専用の画像支援機構内蔵型指導・訓練用シミュレーターのプロトタイプ2機の双方向性映像送受信の環境ならびに吻合モデルの基本骨格は構築されてきている。今後実践的な教育トレーニングプログラムの改良とその有効性の検証を進め、さらなる発展を探索するために、以下の点について方策を検討する。 ①シミュレーターの精度向上とトレーニングデバイスとしての品質向上:双方向性合成映像における被験者からみた視認性の改善と、鉗子操作などの動作認識の改善が必要である。合成画像中の視覚効果を向上させるために、操作鉗子や臓器モデルに対して別々の識別マーカーを導入するといった工夫に取り組む。 ②吻合モデルの改良とトレーニングプログラムの検証:これまでに構築した吻合モデルを用いて試験的吻合操作の検証を行い、臓器モデル自体の構造の改良と吻合操作手順のプロトコルを各々のモデルに対する設定条件を探索する。各モデルごとのプロトコルに対して、ボランティアを用いた学習効果の評価を行い、最終的には複数のプロトコルを組み合わせた体系的な訓練プログラムの確立を目指す。 ③遠隔指導システムの開発:シミュレーターのプラットフォームを利用した遠隔システムの導入にはいくつかの手法が想定される。インターネット回線を用いたプロトコルの確立を目指す。同時に映像情報の双方向性授受に加え同時音声情報の配信や、シミュレーター内の映像だけでなく、シミュレーターの外観映像の共有の可能性についても検証を進める。
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