研究課題/領域番号 |
15K01032
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
助川 たかね 岡山県立大学, デザイン学部, 教授 (10440421)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ケース / デザイン教育 / 高度職業専門人材 / 領域横断 / 海外事例 / 都市開発 / ニューヨーク / シンガポール |
研究実績の概要 |
・本研究は、①仏国ヴァンセーヌ、②米国ニューヨーク、③星国シンガポールという3都市での先駆的都市/デザイン事例の調査結果に基づき、ケース教育に用いる教材を開発することを目的としている。特徴的な手法としては、①~③が独立したケース教材として使用できるだけでなく、当該分野に共通する課題を①と②、②と③の比較のなかで抽出し、その課題項目ごとにケースを組み立てることにある。これらケースをシリーズとして授業で使用することで、経済、政治、法律、環境、技術、デザインといった複層的な課題を同時に考える能力を訓練するためである。 ・研究の進捗状況としては、初年度に実施する予定であった①の現地調査を治安の悪化などの理由で延期しているため、②および③を先行して実施した。さらに、開発手法の評価のために、②および③を先行成功事例として追随し同種の開発を実現させている④韓国ソウルと台湾台北での事例について、追加調査を実施した。その結果、①~③の評価項目や課題が明確に抽出できるようになった。 ・①を除く事例調査のデータベース化および写真や動画資料の整理・編集はほぼ完了しているが、今回開発するケースではデザイン教育における実践的な議論の材料とするため、ケース教材では従来、補助的な要素でしかなかった写真や図面など視覚的データが重要となる。視覚的データを含めた教材の内容構成について教材としての適切な頁数も含めて検証中である。 ・共通項目の抽出については、②と③、②と④はほぼ完了しているため教材の内容構成も固まっている。横断的領域での使用を目的とするため、単一領域型のケースでは必ずしも必要とされない基礎知識に関する注釈の扱いについてはまだ試行錯誤の段階であり、同タイプの教材開発において長期的な課題となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画段階で予定していた3都市の対象事例のうち、仏国ヴァンセームの現地調査が実施されていない。当該地区は初年度に調査予定であったが、テロによる欧州の治安悪化があったため延期していた。その間、他の予定地域での現地調査を先行させ、さらに米国の事例を参考に実施された韓国および台湾の事例調査をあらたに加えた。仏国での調査は、すでに28年度前半に実施計画をたてており全予定調査を完了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
まず、仏国ヴァンセーヌの現地調査を年度前半に実施する。当該事例は米国ニューヨークの事例が開発計画を立てる際に参考にした廃線を利用した再開発の先駆的事例であるが、その認知度や経済効果では後発の米国事例が圧倒的な強さを見せている。両方の事例および新たに加えたアジアの同種の開発を比較検証することで都市の根源的な共通課題を抽出、その課題項目に基づくケース教材を並行して開発する。星国シンガポールについては、対象地区の認知度や集客力が本研究を開始した3年前に比べ大きく高まったことを受けて、成功事例として教材化する。星国は、米国の草の根型開発と好対照の行政主導型の事例であるため、開発における意思決定プロセスを中心に共通課題項目を立てて、仏国・米国の教材と同様に並行して開発をする。全体的な研究成果としては、米国の事例を中心に仏国および星国の事例をそれぞれ比較できる領域横断型ケースにまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 研究計画で予定していた3都市での現地調査のうち仏国での調査が実施されておらず旅費が未使用であるためである。さらに、その結果、当該事例の現地調査資料の整理に携わる補助研究員の人件費、教材の翻訳・刊行に関する打合せのための旅費が一部、未使用となっている。 使用計画 現地調査については30年度前期での実施計画をすでにたてており、これに付随して人件費および国内での打合せも当初計画通り執行する予定である。
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