2015 年度実施状況報告書

アクティブ・ラーニング導入による学生の主体性獲得プロセスのモデル化に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号	15K01036
研究機関	東海大学
研究代表者	白澤秀剛東海大学, 情報教育センター, 講師 (50548766)
研究分担者	丸山有紀子東海大学, 情報教育センター, 准教授 (40248779)
研究期間 (年度)	2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード	アクティブラーニング / 学習者特性 / クリッカー / コミュニケーション特性
研究実績の概要	平成２７年度は、研究実施計画に従い、次の３つの項目を軸として研究を実施した。１つ目は履修者特性の探索的調査、２つ目は大人数講義教室におけるクリッカー使用方法の確立、３つ目はＬＭＳを利用したアンケート実施や学習履歴データの分析方法の検討である。１つ目の履修者特性の探索的に関しては、グループ作業におけるコミュニケーション特性、楽観度／悲観度、メタ認知スキル、自己肯定感、履修動機などの調査を行った。特に、語学の授業においては授業における能動的活動（ペアワークやグループワーク、発表など）の種類により、入門クラスから中級クラスへステップアップする学生のコミュニケーション特性に偏りが出ることを示唆する結果を得た。単年度の結果のため、ここから、普遍的な結果を導くための調査項目および調査時期についての検討を現在進めている。２つ目の大人数講義教室におけるクリッカー使用方法の確立では、約100名のクラスと約200名のクラスにおいて、講義型授業の途中にクリッカーを使用した特性調査を実施した。この調査では、特性調査自体は主眼ではなく、端末配布に掛かる時間や端末の返却率、回答率などを目的とした。結果として、端末配布方法については一定の工夫が必要であることがわかったが、どちらのクラスにおいても90%以上の回答率を得ることができた。次年度に向けてクリッカーによる授業内特性調査方法の検討を進めている。３つ目のＬＭＳを利用した履修動機調査や学習者特性データ調査においては、119名の有効回答を得ることができた。この調査においては、アクティブラーニングが導入されている授業を履修している学生の回答率が高かったため、次年度以降の授業でもグループワークなどのアクティブラーニングを多く希望する回答が多かった。これは一つの結果であるが、より一般的な結果を得ることを目的に、調査対象者の拡大を検討している。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 3: やや遅れている理由クリッカーデータのアップロード機能については、ＬＭＳ提供企業と協議を重ね、開発コストの試算をした結果、交付された研究経費では大幅に不足するとの結果であったため、断念することも含め、別の方法を模索することとした。アンケートデータから第１回目の構造方程式モデリングを実施する予定については、回答結果を分析した結果、回答者のアクティブラーニング経験に大きな偏りが生じていたことが判明したため、次年度の追加調査を待ってモデル化を行うことが妥当と判断した。
今後の研究の推進方策	2017年度は、交付申請書に記載のものを基本として、前年の結果を受けた測定手段の追加を予定している。まず、基本的な研究方針としては、ＬＭＳを利用した履修動機調査や学習者特性データ調査を対象クラスを拡大して実施し、第１回目のモデル化を行う。また、昨年度のアンケート結果および今年度のアンケート結果を踏まえた、成績評価基準の作成や教材の検討を行い、秋学期の授業に反映させていく。クリッカーによる授業内での学習特性データの取得については、前年度の経験を元に、今年度は本格的に実施していく。また、秋学期にも同様の履修動機調査や学習者特性データ調査を実施し、春学期からの変化を分析し、第２回目のモデル化（モデルの更新）を行う。昨年度の結果を受けて変更する点は、生体情報データ取得によるアクティブラーニング成果の検証を導入する点である。国内のメーカーが発売を開始した眼鏡型の生体情報データ取得装置を借りて試験的測定を行ったところ、集中力や教員の話しに反応しているかどうかなどのデータが取得できることが予見される結果を得た。この装置は、非侵襲的で、眼鏡型端末を掛けて授業を受講するだけで90分間のデータを連続的に取得できる。これにより、クリッカーでの自己申告データの信頼性などの検証も可能になると推測される。春学期は、この装置使用に関する倫理承認申請と、承認後の予備調査の実施を予定している。倫理承認が問題なく了承された場合には、秋学期の共同研究教員の授業において、眼鏡型生体センサーを被験者に装着してもらい、アクティブラーニングによって学生がどのタイミングで、どのように主体的になるのかについて、授業展開と比較しながら時系列的に分析する予定である。