研究課題/領域番号 |
15K01049
|
研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
星野 朱美 富山高等専門学校, 一般教養科, 教授 (90300566)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 中国語 / 有気音 / 無気音 / VOTの長さ / VOT中のパワー / 自動判別 / フォルマン |
研究実績の概要 |
中国語の発音の殆どが日本語に無い音なので,多くの学生は中国語の発音を難しく感じている。その中でも「有気音」と「無気音」は調音の区別が困難であるとともに,発音を正しく聞き分けることも難しい。また帰宅後の自習も自分の発音が正確かどうか,チェックする手段がない。そのため,本研究ではIT技術を用いた中国語発音教育のコンピュータ援助指導システム(CAI)の開発を目指している。 研究は研究計画書に記載した通りに実施している。中国語の発話の認識率の精度を上げるため,様々なデータが必要になる。まず,本年度は台湾の国立台北大学と清華大学へ出向き,二つの大学で台湾出身の中国語話者(台湾人)の発話の収録を行った。また,日本人の学生の中国語の発話の聞き取り評価を大学の教員たちと学生たちにより実施した。 昨年度は初期段階で唇音の「有気音」と「無気音」の自動判別システムを開発したので,本年度は自動判別率向上のため,認識の特徴パターンを増やし,台湾や国内で収録した発話を追加し,フォルマントF1~F4の測定用ができるようにプログラムを改良した。新たな判別基準による自動判別システムを開発し,それらのシステムを用いて,各発話の音節の VOTと有声期間中の平均パワーを自動測定することにより「有気音」と「無気音」の音節の自動判別の実験を行った。その結果,自動判別率の精度が向上し,「有気音」のpa[p’a], pi[p’i],po[p’o],pu[p’u]の自動判別率はそれぞれ95%,98%,95%と95%で,「無気音」のba[ba],bi[bi], bo[bo],bu[bu]の自動判別率はそれぞれ98%,98%,96%と95%で,いずれも高い判別率が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した通りに実施している。中国語は発音の種類が非常に多いので,パターンも多い。発話の認識率の精度向上のため,様々なデータが必要になる。まず,台湾へ出向き,現地の中国語話者の発話を収録した。また,日本人の学生の中国語の発話の聞き取り評価を大学の教員たちと学生たちにより実施した。 本年度は唇音の「有気音」と「無気音」の高精度の自動判別システムの開発を目的として,まず,認識の特徴パターンを増やし,発話データの数も増やし,唇音のVOTの特徴パターンの抽出システムを改良した。更に新たな有気音と無気音のフォルマントのF1~F4の測定システムも開発し,それらを用いて発話の特徴としてF1~F4を抽出した。更に新しい判別基準により「有気音」と「無気音」の自動判別システムを開発し,各発話の音節の VOTと有声期間中の平均パワーを自動測定することにより「有気音」と「無気音」の発話の自動判別の実験を行った。その結果,いずれも95%以上の高い判別率が得られた。 H27年度とH28年度の研究結果は,2016年春季日本音響学会研究会と国際学会(The 20th International Conference on Asian Language Processing (IALP2016))で発表した。未発表の研究結果についてはH29年度に国際学会で発表予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載した通りに実施している。中国語は発音の種類が非常に多いので,パターンも多い。平成29年度は舌根音の「有気音」と「無気音」の自動判別システムの開発を目的として,学生の発話と中国語話者の発話のVOTの長さ,VOT中と有声期間中のパワーの大きさや特徴,周波数スペクトルなどをそれぞれ分析する。35チャンネルのフィルターバンクを用いた周波数スペクトル自動測定により,舌根音のVOTの特徴パターンの抽出システムを開発する予定である。更に舌根音の有気音と無気音のフォルマントのF1~F4の測定システムも開発し,それらを用いて発話の特徴としてF1~F4を抽出することにより,舌根音の発話の新しい評価基準を提案し,それらのデータを用いて,有気音・無気音の発話の自動認識システムを開発する。 それらの結果を国内外の学会で発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は上記(今後の研究の推進方策)のとおり研究を遂行する。H28年度の未使用額が生じたのは,平成27年度と平成28年度の研究結果は国際学会で発表予定であったが,至急公務に入っており,日程の調整ができなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に国際学会で発表予定である。
|