学校のいじめは解決すべき問題であるが,いじめの原因が加害者と被害者のどちらにあるかは状況依存であり客観的に決定できない.そこで,当事者がいじめに巻き込まれないために学級内でどう振る舞えばよいか,その指針を与える必要がある.本研究では生徒エージェントから構成される人工学級モデルに,ヒトがプレイヤとして参加し,友人関係を構築する人工学級ゲームを提案た.ただしプレイヤが複数存在するときには,プレイヤとエージェントの行動を決定するまでの時間が異なり過ぎるため,プレイヤ数の増加に伴い,ゲームプレイ時間が増大する問題があった. そこで本研究では,被験者となるプレイヤは一人だけだが,残りのうち,半分はエージェントで半分は他のプレイヤである,と被験者に嘘をついて,人工学級ゲームをプレイしてもらうこととした.大学3年生5名に被験者になってもらった.実験の目的を明確には提示せず,被験者には日常の学校生活を思い出してもらいながらプレイしてもらった.被験者は自分の都合に合わせて,他者と友人関係を結んでもらった.ここで友人関係とは,ゲーム内に設定した価値に対して,他者と同じ価値を見出すことにより結ばれる関係である.ゲーム終了後,被験者は,相手人工学級の中の誰がエージェントで誰が他のプレイヤであったかを言い当てるよう指示された.その結果,排除行動を行ったエージェントや,受けた行動をそのまま仕返したエージェントが,偶然にも他のプレイヤであると判断された.また,プレイヤ以外の全員がエージェントでありプレイヤを騙さないという先行実験と比べ,プレイヤの排除行動が増加した.相互作用の相手がヒトかもしれないという環境では,排除行動は増加することが示唆された.
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