本研究では、災害時に緊急連絡手段として、電源等も含めた自立型の長距離無線LAN システムを構築し、避難所として利用される学校への設置の可能性を探ってきた。また、平常時には気象情報収集システムとして稼働させることにより、学校での学習活動に利用できるようにするだけでなく、災害時にスムーズに利用を開始できる方法の検討を進めてきた。 研究当初、目的とする機器に類するシステムは存在しなかったが、IoTの急速な発展に伴い、同様のシステムがすでに市販される状況になっている。そのため、研究の中心を、開発自体から、これらシステムの利用可能性の検討に中心を移し、研究を進めてきた。 これまでの研究において以下のようなことが明らかとなった。機器のうち、屋外指向性無線LANアンテナのサイズの問題が、設置に大きな影響を与え、手軽な運用に大きな支障になる。コンピュータ本体や無線LANユニットについては、小型化、省電力化により、バッテリー等も小型のもので対応が可能である。反面、アンテナに関しては、その性能の維持のため、現在市販されているものでは大きすぎて、設置が困難である。これらの対策としては、今後のアンテナの小型化も期待できるが、電波到達距離を短く設定し、小型のアンテナで通信できる範囲にシステムを設置する等、設置場所を増やすことで対応することも考えられる。ただし、これには設置場所の確保や、管理するシステムの増加により、管理コストが増大することも考えられ、現時点では最適解を求めるに至っていない。 気象サーバ機能については、良好にデータの取得が可能であることを確認している。ただ、気象サーバ等を対象とするサイバー攻撃も増加しており、セキュリティ面において防御方法等を検討する必要も出てきている。 今後も今回開発したシステムの継続運用を行いながら、実現可能性の高いシステムの開発と運用方法の検討を進めていく。
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