研究課題/領域番号 |
15K01065
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
後藤 明史 名古屋大学, 情報基盤センター, 准教授 (50225645)
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研究分担者 |
平山 勉 名城大学, 教職センター, 准教授 (50250866)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 授業研究 / 一人称映像 / 教師視線 / 意思決定 / アイトラッキング / 注視点 / 抽出児 |
研究実績の概要 |
今年度は、教師の一人称映像の分析方法の検討について、1.教授行動と注視パターンの関係に着目し、2.事例収集のための留意点の抽出することに重点的に取り組んだ。また、多元的な映像記録の拡張として抽出児(生徒)の記録法方法の改善にも取り組んだ。 期間中に、研究協力校の小学校の授業を5件(うち1件は教職程履修生による授業)、中学校の授業を2件、大学の講義(教育実習の事前指導)の教職課程履修生による模擬授業15件の収録を行った。 昨年度より取り組んでいる注視点の可視化について、特に、教職歴の違いに着目し、同一の学年、教科、単元、学習指導案で、初任教師(A教諭)と教職歴17年目の教師(Y教諭)の注視点の比較を行った。教師の教授行動の「説明・発問」、「指名」、「机間指導」に着目し、それぞれの行動中の注視点のパターンを可視化し、比較検討を行った。説明と発問を同じ項目にしたのは、A教諭の教授行動が発問と説明を同時に行うことが何度もあったためである。二人の教諭の注視点の分布についてF検定を行ったところ、指名時には、Y教諭の視線はA教諭の視線よりも横方向に広く分布していたが、縦方向は有意差がなかった。机間指導時には、Y教諭の視線はA教諭の視線よりも横方向、縦方向(大)ともに広く分布していた。説明発問時には、Y教諭の視線はA教諭の視線よりも横方向(大)に広く分布していた。縦方向は有意差あるもわずかであった。 指名時にはY教諭はA教諭と比較して、指名した子どもだけでなく他の子どももより見ている可能性を提示している。また、Y教諭はA教諭と比較して、説明や発問をしながら子どもの反応を広く探ろうとしている可能性を提示している。 抽出児の記録法方法の改善として、4Kビデオカメラにより教室前方から全体を撮影し,映像から抽出児を切り出し拡大すると,HD映像と比較して表情などが鮮明に判別でき有用であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アイトラッキングカメラを使用し22件の授業の収録が実施できた。 教師の注視点の分布と教授行動の関連について、2名の教師の授業の比較から教育歴の差が注視点の分布の差に表れる可能性を提示できた。初任教師の「視野」が狭く、熟練教師の「視野」が広いことは、これまで経験的にはいわれていたことであるが、データとしても確認することができた。しかし、あくまでも2名の比較であるので、他の事例を積み上げる必要がある。 同一教師、同一学習指導案による異なるクラスの中学校の授業が収録できているが、データの解析に至っていない。 教職課程履修生の模擬授業について、1名の学生を2回以上収録し、前後の注視点の変化について学生自身に比較検討させているが、指導方法を確立し、「教育実習の事前指導」のカリキュラムに反映する必要がある。 このように、進展も多いが、進展により新たな課題も見つかっている。したがって、「やや遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から継続する課題として、次の2点が挙げられる。1.初任教師と熟練教師の注視点の注視点の分布について、教授行動との関連について、更に事例を積み重ねる。また、中堅教師の注視点の傾向についても、事例を得たい。2.同一教師、同一学習指導案による異なるクラスの中学校の授業について、データ解析を行い知見を得る。 これまでは注視点の分布については、視野上のどこを見てるを分析の対象としてきた。眼鏡型のアイトラッキングカメラでは、教師の視野は頭部の向きと連動するため、視野映像は固定されず、分析では「何を見ているか」は考慮してこなかったが、これを分析の対象として加える手法の開発に取り組むこととする。 国内の学会・研究会に加えて、国際的な研究集会での成果発表を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した4Kビデオカメラについて低価格化が進み、予定価格よりも安価で購入出来た。また、成果発表のうち1回について、研究分担者の大学行事日程が重複し不参加となったため、旅費が予定額以下となった。
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次年度使用額の使用計画 |
発表を計画している国際学会の英文校正費用等に使用する予定である。
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