本研究では,情報基盤における操作ログや認証情報を利用し,情報基盤上の断片的な操作記録を各利用者に関連付けることにより統合し,利用者の学習行動などの体系的な情報を取得することにより,高等教育機関における様々なアナリティクスを実行可能にすることを試みた. 利用ユーザが特定できる無線LANシステムの利用記録を過去5年間に渡って分析し,学生全体の利用傾向を分析するとともに,人文系,社会系,理系ごとに利用傾向の分析を実施した.その結果,スマートフォンの普及とともに,無線LANの利用者は増加しており,学問分野による差異は認められなかった.また,利用機器の種類については,増加分の殆どはスマートフォンであることもデータから裏付けられた. 更に,日中に無線LANの利用者の中で一時間ごとにどのくらいの割合て各学年の学生が利用しているかについて,各学部ごとおよび自習室ごとに分析を行った.その結果,学部ごとに顕著な特徴があり,学部における教育活動から推測できる結果と一致した.このことより,無線LANの利用状況の分析は大学における学生の活動を反映したものとなっていることが強く推察される結果を得た. 以上の分析により,無線LANの利用傾向は,ほとんどの学生がスマートフォンを保持している現在においては,学内における行動の傾向とほぼ一致することが裏付けられた.また,スマートフォン以外の通信を分析することにより学生の学内における学習行動のより詳細な分析が可能であることも推察される.
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