研究課題/領域番号 |
15K01072
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
松浦 健二 徳島大学, 大学院理工学研究部(情報), 教授 (10363136)
|
研究分担者 |
Karungaru Stephe 徳島大学, 大学院理工学研究部, 講師 (70380110)
後藤田 中 香川大学, 総合情報センター, 助教 (40633095)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | メディアの活用 / 身体スキル開発支援 / 縄跳び運動学習 / フラフープ運動学習 / 同期的支援 |
研究実績の概要 |
反復運動を対象とした,運動スキル開発の新しい支援手法の提案に取り組んでいる.平成28年度は,その前年度に実施した非同期的支援を発展させつつ,同期的支援に着目した支援手法の開発にも注力した.平成28年度の研究成果は,国内外の学会等において比較的多くの実績に繋がっている. まず,非同期系の支援手法では,縄跳び運動の学習を対象に,要素技術として動画解析を進めてきた.動画解析に際しては,パーティクルフィルタを応用することによって,二重跳びの周期運動に対する縄の速度分析に成功し,発表している.この分析結果は,縄跳びにおける周期運動の加振タイミングを指南するのに役立つことが見込まれる.さらに,縄跳びに関する学習戦略においては,4段階での学習プロセスに含まれる運動要素毎の分析手法を詳細化し,その統合化での学習支援を進める形式でのシステム設計を行った. 次に,同期的な支援手法として,縄跳びだけでなくフラフープといった類似した運動を対象に,モーションキャプチャやセンサを用いた学習支援手法を設計・実装し,発表を行った.運動技能の本質を,タイミング,グレーディング,スペーシングによってモデル化し,回帰分析を導入することによって,反復運動の発動制御を学習する手法を提案した.数理モデルに対して,身体運動として実現する際には,理想解通りには動けないため,ある程度の補正を,特定の方向にかける必要がある.このための,データ取得と分析に基づいて,これらの具体的な実装を行った. また,運動の対象を広げることにより,同期・非同期の両面からの支援に拡充させるべく,運動感覚の記録や再生,選択的フィードバックの方法論を検討した結果,複数のシステム提案としての発表に繋がっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度では,研究組織(代表者,分担者,協力者)の定期的なミーティングを通じて,活発な研究と外部への発表を展開し,おおむね順調に進展していると判断できる.特に,反復(周期)運動の中でも短時間での運動を捉える必要のある二重跳びを対象に,動画像分析した結果,加振するタイミングについて,新たな知見を得て発表を行った.この結果は,学習支援する際の効率化に寄与することが可能である.そのために,観測自体をリアルタイムに行いつつ,得られた適切な加振タイミングに対して,認知的な特性や,反応までの遅延を考慮した補正を行う必要があると考えている.つまり,反復運動における運動のセグメント化をせずとも,時系列データの中で特徴点をとらえて,そこからの相対的なタイミングでの支援を行う手法についても着手している.したがって,その補正の方法等についてもシステム設計し,一次評価を実施している. また,フィードバックのメディアとしては,初学者にとってはシンプルであるほど受容しやすいことからも,聴覚系で実装し,上記一次評価の中でデータ取得を行なっている. 反復運動の対象としては,前述の縄跳びとフラフープを中心に,移動のない周期運動を対象に,観測・分析・フィードバックという基本的な支援フローで取り組んでおり,概ね当初予定通りの研究成果を内外に発表できているものと考える.研究協力者の一部が,交代することもあったが,過年度の研究成果の継承も問題なく進んでいる. ただし,初年度も少し検討を要した,支援対象者の制限が比較的厳しい点については,当初計画における研究での特徴から,まだ改善の余地はあるものと見ている.このことから,平成28年度の進捗に関しても,おおむね順調との判断となった.
|
今後の研究の推進方策 |
反復運動における熟達化支援にとって,学習プロセスを段階的に捉えて実装する学習戦略を導入する予定である.具体的には,これまでの学習フェーズ,各フェーズ内での学習プロセスのモデル化と,そのフローを再検討する予定である.また,プロセス間の関係や,フェーズを跨いだ統合的な戦略の構想も必要になるものと考えている. それらに加えて,その適用範囲をある程度一般化するための多種の運動対象への展開,同期・非同期の両面アプローチについても取り組むべきと考えている.また,動作解析に関しての認識技術自体の側面や,スキル学習を支援する学習科学面からも,方式検討と実施・評価を進めたい. 以上の方針を踏まえて,最終年度には,研究組織以外の関連する研究者との議論も進めつつ,積極的な学会発表や論文投稿を継続する予定である.関連学会での企画提案やその実現などを通じて,本研究の対象領域に関する研究自体をより広範に広めるような活動も展開したいと考えている.また,最終年度に一定の研究成果を公表すると共に,その発展研究についての構想も進めたいと考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているが,国際発表の出張先を当初予定から変更が生じていることと,論文投稿に関する予算計上分が,次年度に繰り延べになった影響と考えている.その他の物品費,旅費等についてはほぼ当初計画通りである.研究の進捗自体に影響は出ていない.
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り延べとなった論文投稿に関する予算は,最終年度に執行する予定である.また,反対に当初計上していなかった英文校正等の支出も予定していることから,他の予算費目との相殺で年度始に再設計する.
|