研究課題/領域番号 |
15K01074
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
川上 綾子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50291498)
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研究分担者 |
木下 光二 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (40509634)
益子 典文 岐阜大学, 総合情報メディアセンター, 教授 (10219321)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 授業デザイン / 熟達化 / 視点 / 知識構造 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,授業デザインの熟達過程における認知的要因の変化について,特に視点と知識構造の面から検討することである。授業デザインで必要とされる思考の特質を踏まえたとき,視点の知覚的機能を敷衍した他者理解方略が有効に作用すること,及び,当該の方略利用により授業デザインに関連する知識構造に変容のみられることが推測できる。本研究は,これらの点について,教員志望学生と現職教員に対する調査を通して検討を行い,教員養成教育における授業デザイン力育成への知見提供をめざすものである。 初年度(平成27年度)は,授業デザイン力の形成過程における視点と知識構造の変容との関係を検討するため,教員志望学生を対象として,大学院での演習科目やカリキュラム上で設定されている学校現場での長期インターンシップに際し,授業デザイン及びその実践に係る各種データ(大学における模擬授業やインターンシップでの実践の記録,指導案や教材,ゼミでの発話記録等)を縦断的に収集し,それらの分析を行った。主な結果として,年度の前半と比べ後半には,児童に対する自分のイメージが実態とずれていること,授業デザイン時に想定していたのは児童が実際に示すであろう反応というより自分が児童に期待する反応であったこと等,児童の内的過程の理解に関わる気づきがよく現れるようになったことがあげられる。これは,大学での模擬授業やインターンシップでの実践とその振り返り等の繰り返しを通じて,児童の立場(視点)から自分の授業を見ることができるようになってきた現れではないかと考えられる。また,学生がもつ児童に関する知識が,一般的・全体的・直観的なものから,学力・性格・行動面等について豊かなバリエーションをもつものになりつつあり,今後,授業で扱う教材との関わりにおいてそれらの知識が構造化されていく可能性を示していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の計画に沿って,教員志望学生を対象として,所属する大学院の演習科目やゼミ,学校現場での長期インターンシップ等を通じて収集される種々のデータの縦断的な収集・分析に取り組んだ。同じ学生たちを対象に,次年度も引き続きデータ収集を行い,さらに縦断的な変容を追う計画であるため,途中経過としての現時点の分析結果ではあるが,一定の成果を得たと考える。一方,当初の計画にあった現職教員の授業デザイン方略に関する調査は,教員志望学生の調査結果に基づいてデータ収集の観点を設定してから実施することとし,次年度に具体的な計画を詰めて実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
教員志望学生への調査については,次年度も引き続き今年度と同じサンプルを対象として縦断的なデータ収集・分析を進めるとともに,新たな大学院入学生も調査対象者として追加のデータ収集を行う。それと併行して,現職教員(並びに,一定年数以上の教職経験者)の授業デザイン時の方略に関する調査を実施し,学生の分析結果と比較しながら,授業デザインの熟達過程における認知的変容について結果の体系化を図っていく。さらに,教員志望学生に対する指導において,視点の知覚的機能を敷衍した他者理解方略の利用を促してその効果検証を試み,最終年度に向けて教員養成教育における授業デザイン力育成方法への示唆を得る。
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