研究課題/領域番号 |
15K01085
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研究機関 | 千歳科学技術大学 |
研究代表者 |
曽我 聡起 千歳科学技術大学, 理工学部, 教授 (30279476)
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研究分担者 |
川名 典人 札幌国際大学, 観光学部, 教授 (50295929)
中村 泰之 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70273208)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | iBooks Author / HTMLウィジェット / デジタル教科書 / モバイル端末 / タブレット |
研究実績の概要 |
LMS連携型デジタル教科書とそのオーサリング環境の構築について,以下のような進展があった。 (1)システムの開発状況:昨年度科研費で開発したMoodle用のブロックプラグイン(HTMLウィジェット出力プラグイン)を利用して行った実証実験の結果,いくつかの改善を施した。科研費執行により現在稼動状態にあるデジタル教科書教材作成用教材共有サイトである。このサイトにはデジタル教科書を作成するために必要な教材を共有できる。今回,この機能を実現しているプラグインを改良し,これまでは実現できていないアップロードされた教材のプレビューやその詳細を記述したページを自動生成することで,利用者間の利便性が高めた。また,従来のHTML出力プラグインでは,クイズ内の連続する問題を出力する際にページを戻る機能が実現できていなかったので,これを修正した。 (2)実証実験の準備:最終年度実施する実証実験のために,iBooks Authorを用いたデジタル教科書の開発を行った。これまでに行った実証実験から,デジタル教科書を作成する際に,実施する授業形態に合わせた内容となることがわかってきた。これまでは,学習者に授業前に課題を含むデジタル教科書を示したり,授業中にデジタル教科書を使いながら授業を実施するなどの利用を行なってきた。これらは,一回のみの授業で利用してきたが,最終年度は大学において連続する授業でBYODの環境で用いるテストケースや高校の授業で利用するケースなどを想定している。 (3)ワークショップの実施:今回のシステムを用いたiBooks Authorの利用に関するワークショップを実施した。また,デジタル教科書作成支援サイトは,教材のアップロード時にクリエイティブコモンズに準拠しているため,留意すべき著作権情報などを共有するためのワークショップを合わせて開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費2年目で開発したシステムを用いて概ね順調に実験をこなしている。昨年度の経費によりシステムの基盤となっているMoodleの3.1及び3.2に対応したことで,最新版のMoodleで新たに追加された問題タイプに対応することができた。特に,ドラッグ&ドロップインターフェース型の問題タイプに対応したことで,携帯情報端末におけるマルチタッチディスプレイの特徴を生かしたデジタル教科書の実現へと繋がることが期待される。 同じく,作成したHTMLウィジェットなどのデジタル教材用素材の共有サイトについても,実験協力者を中心に利用されている。今回の実験では,LMSであるMoodleを授業において利用するための知識が必要とされるが,教材共有サイトで稼働するMoodleを使いクイズなどを作成し,HTMLウィジェットとして出力することができるなど,実運用に近い環境で利用することができる。教材共有のための「素材フォーラム」も教材共有サイトで稼働させた。これにより,作成した教材に関する議論や意見交換を期待している。 こうした教材の特性を活かし,我々が行った実証実験では学習者自身がそれぞれの端末を教室で利用する,いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)による授業や反転授業など,異なる授業様式における利用を試みた。これらの成果をもとに,教師と学習者双方の側面による,ボトプアップから始めるデジタル教科書を用いた授業について,学会誌コンピュータ&エデュケーション(コンピュータ利用教育学会)に投稿し採択された。 また,教員が作成するデジタル教科書であることを,ボトムアップで始めるデジタル教科書の作成と称して教育学系の学会である2017PCカンファレンス(コンピュータ利用教育学会),日本デジタル教科書学会第5回年次大会(日本デジタル教科書学会)などで,中間結果として成果発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は,いくつかの授業形態でデジタル教科書を作成し,学習者に提供する実証実験とそれらを取りまとめた発表を検討している。現在準備中の実験は,これまで行ってきた,数回の講義のための実験ではなく,大学における半年で15回に及ぶ実験を対象にしたものである。この場合,デジタル教科書は授業内容の振り返りのための教材として位置付けている。そのため,講義で使用するスライドに合わせた内容のテキストデータを準備し,コンテンツとして用いるようにしている。デジタル教科書には,授業で使用するスライドやMoodle上の課題提出用HTMLウィジェットなどを提供することで,iBooks内で収束した学習環境を提供する。このデジタル教科書自体をMoodleのそれぞれの授業回数にアップロードしておき,学習者には授業の前にダウンロードさせて,復習時に課題をこなす際に利用させるようにする。授業環境はWi-Fiが準備された教室を使い,BYOD(Bring Your Own Device)方式により学習者自身の端末を自由に持ち込ませる。このために,iBooksが利用できないAndroid端末の学習者向けに,iBooks AuthorファイルからPDFを出力し,iBooks教材と同様にMoodleにアップロードするようにしている。課題提出先などはURLで学生に示している。これまでのところ,iBooks利用者とPDF利用者の比率はが9対14である。 他に,協力者を集い,高校生を対象にした情報に関する授業でデジタル教科書を使うなどの実験も実施する予定である。Wi-Fi環境の設置が困難であることが予想されるため,ローカルPC上にサーバーを構築するようにした。これらの成果については,2017PCカンファレンスなどで発表・報告の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
端末機材(iPod touch)として新品と同等の整備済品を購入したため,当初予定より安価に購入することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度では,実証実験を行うことから,前年度経費のうち今年度への繰越分はそのための実験用端末の購入などに充てる予定である。
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