研究課題
最終年度は,開発したシステムを用いながら,より多くの授業形式や科目での実証実験を行った。授業形式としては,実験に協力してくれた医療系大学で国家試験対策における少人数ゼミ形式のほか,1セメスターをBYOD(Bring Your Own Device)環境で熟す一般的な講義形式(授業科目は人間情報科学)などの追加実験を行った。実験を行った学生のデジタル教科書に対する評価は高く,特に国家試験対策の授業では教科書の利用により成績が上がることが,我々が開発したMoodleウィジェットを通じて把握することができた。これらの授業では,これまで本研究が用いてきたiBooks形式のデジタル教科書に加えて,PDF形式の教材を提供して比較を行った。これは,今後普及が進むと考えられるBYOD方式の授業では様々なOSやアプリケーションが利用されることを意図した試みであった。iBooks形式の教科書ではウィジェットにより,iBooks内で教材参照が完結するが,PDFではWebブラウザなど他のアプリケーションとの連携操作が必要となる。教育学系の学会などの小中高の教師からは,iBooks方式の利点を指摘された。すなわち,学習者が他の操作スキルを要求されたり,Webブラウザを使うことで授業中に他の操作をすることが懸念されるとのことであった。我々が行った大学生を対象にしたPDF形式の実験では,懸念されたような問題は発生しなかった。しかし,iBooks形式で完結するデジタル教科書を,PDF形式で対応するためには,別途別のアプリケーションで展開するための教材を製作したり,ダウンロードさせるための準備が必要になるなど,教師が自ら作成する教科書をコンセプトとする今回の研究では,少なからず教師への負担があったことは否めない。これらの成果は,国内外の学会で発表・報告を行った他,紀伊國屋札幌本店で報告会を開催した。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
日本デジタル教科書学会発表予稿集
巻: 6 ページ: 69~70
https://doi.org/10.20755/jsdtpr.6.0_69