厚生労働省によると,建物内の二酸化炭素濃度は1000ppm(0.1%)の基準が設けられている.この数値を超えると,眠気等の症状を誘発すると言われている.受講者自身からの発熱により教室内の温度が上昇する.また,受講者の呼気には二酸化炭素と水蒸気も含まれており,眠気の誘発や「じめじめ」といった不快感の原因となる.BYOD(Bring Your Own Device)によって受講者が所有するノートPCを活用するプログラミング入門教育では,持ち込んだノートPCからの発熱も加わり,教室内の温度が上昇し,教室環境が悪化する. 本研究では,BYODを前提としたコンピュータプログラミングの授業を対象に,教室内の二酸化炭素濃度に着目した.複数の測定装置を平面的に配置することによって,二酸化炭素濃度の空間分布を3次元表示することに成功した.さらに1分毎に計測した結果を,アニメーション表示することにも成功した.授業開始から終了までの間に,二酸化炭素濃度の時間的な変化を分析できるようになった.その結果,教室内の二酸化炭素濃度にはかなりの斑があることが明らかになった.教室内に設置された空調から排出される空気が教室内を循環する中で,最終的に空気が滞留する領域があり,その領域の二酸化炭素濃度が高くなっていることも分かった. 教室内の高さの違いによる二酸化炭素濃度の変化を測定した.その結果,季節の変化による教室内の二酸化炭素濃度の空間分布に違いがあることが明らかになった.教室内が冷えている春先では,二酸化炭素濃度は机上よりも床上の方が低く,夏場では,教室全体が暑くなり,二酸化炭素濃度は机上,床上を含め高くなった.暖かい呼気は,春先では呼気の上昇が起こる.冬場では,その差が顕著に現れた.一方,夏場は教室内が暑いため呼気の上昇が抑えられ,教室全体の二酸化炭素濃度が高くなっていることが明らかになった.
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