研究課題/領域番号 |
15K01097
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎一 日本福祉大学, 全学教育センター, 教授 (10410763)
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研究分担者 |
影戸 誠 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (50351086)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Project-based Learning / Community of Inquiry / オンライン協働作業 / 高等教育 |
研究実績の概要 |
過年度研究で実践したオンライン協働作業に着目し、コミュニケーションデータを、タスク遂行のためのいわば公式なやり取りに加えて、それ以外の日常的な非公式なコミュニケーションに関するものを入手した。これに、当該オンライン協働作業を実施した学生へのインタビューデータを加えて分析を試みた。 対象とした実践は、日本の生徒・学生と海外の生徒・学生の混成チームによる英語プレゼンテーションを核とするイベント、World Youth Meeting(WYM)である。より具体的には、WYMでの英語協働プレゼンテーションに向けたオンライン協働作業に焦点を当てた。日本の学生とチームを形成する海外の学生は8月のイベント開催に合わせて来日するが、対面での準備期間は限られており、プレゼンテーションに関する実質的な議論は来日前にオンラインで着実に実施しておくことが重要である。対面後にはお互いに距離も縮まり、その後はオンラインでもやり取りが活性化すると一般的に言われるが、WYMでは、対面前に踏み込んだ議論をオンラインで行う必要がある。効果的な支援のあり方を追求するための基盤とすべく、この事前のオンラインでの協働作業に向けた現状を確認するとともに、分析とその結果を踏まえた支援のあり方について検討した。 分析の結果、SNSの普及により、学生達は一見、活発にコミュニケーションしているようではあるが、特に、新参者となる1年生は十分に参画していない傾向が見られた。実作業に対する支援だけでなく、非公式なコミュニケーションにも配慮し、グループメンバー間での社会的存在感を向上(例えば、お互いが距離を縮め仲良くなること)させるような指導・支援の必要性が示唆された。こうした結果を踏まえ、学生のオーナーシップを損なうような介入とならないように留意しつつ、要件やガイドラインを示すなどの指導・支援方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学生アルバイトに、SNS上でのコミュニケーションデータの収集・整理を依頼することを当初より計画していたが、機関のルールにおいてアルバイト作業の場所が学内に限定されることになり、十分に対応することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
オンラインコミュニケーションの分析の結果得られた知見・仮説を踏まえて、オンライン協働作業を伴うプロジェクトのデザインを見なおし、実践を継続する。大学教育の質保証に向けて改めて注目されているルーブリックの動向も踏まえ、協働作業のためのコミュニケーションの要件を設定する。これら要件に従った評価を、教員だけでなく学生自身にも行わせ、そのフィードバックを得て要件自体の評価も行い、改定への見通しを立てる。 学習のプロセスで生成される各種成果物(中間成果物・最終成果物)を、学生が活動の振り返りや次へのステップに活用していけるよう、実践の中で現実的に運用可能な蓄積・共有方法を追求する。 これらの作業は、学習活動の一環として遂行するものもあるが、実験的な要素も含まれるため、それらの作業や評価用のデータ収集は、学生から実験協力者を募り依頼する。機関のルールにおいて作業場所が限定され、依頼する学生の作業時間確保が課題となるため、大学の滞在時間が長い低学年層へ依頼できるように、作業の切り分けを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学生アルバイトに、SNS上でのコミュニケーションデータの収集・整理を依頼することを計画したが、機関のルールにおいて、アルバイト作業の場所が学内に限定されることになり、依頼を予定していた作業時間よりも実際の作業時間が大幅に減少した。これにともない、データ収集・整理のために利用するPCの導入を先送りした。
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次年度使用額の使用計画 |
就職活動などで大学で作業可能な時間が短くなりがちな学生を避けるなど、予定した活動、あるいは、それを代替する最低限の活動を実施できるような対応を検討する。それにより、人件費・謝金の執行が必要となる作業を遂行する。必然的に、低学年層に依頼せざるを得ないことも想定されるが、必要な活動を遂行できるよう、事前指導の時間も見込んで計画を立てる。
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