スポーツの練習者が自分の動作を撮影した映像を観察するとき,撮影した位置とは異なる位置からも観察できるなら,多角的で詳しい観察が可能になる.そこで本研究の平成28年度からの取り組みで,撮影した人物の3DCGモデルを生成し,そのモデルを回転して自由な視点から動きを観察するための技術開発を行ってきた.具体的には,デプスセンサ(Microsoft社のKinect)を用いて得られる3D点群を利用する.しかし,練習者の素早い動きで3D点群が歪む問題や測定可能範囲が狭いという問題があり,平成28年度の後半からデプスセンサに頼らない方式の研究を開始した.すなわち,一般的なビデオカメラを用いて撮影した人物画像から,3次元モデルを生成する手法の開発である. 平成29年度は一般的なビデオカメラを用いる方式に見通しを得ることができた.具体的には,競技コート上の練習者について,競技コートの幾何学情報および練習者の関節間の距離情報に基づいて,関節位置の3次元座標を計算する.さらに,練習者の3次元位置や大きさは必ずしも必要ではなく,立体的な姿勢が観察できればよいことから,関節間の距離情報のみから3次元姿勢を決定する方式にも見通しを得た.この方式では,画像の誤差により計算不能に陥る問題が生じたが,画像修正の最適化により解決する方法を確立した.以上により,3DCGモデルを生成して多角的な観察を可能とするための方式として,(1)デプスセンサを用いる方式,および(2)一般的なビデオカメラを用いる方式の各々について,基本技術を確立した.
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