研究課題
近年、特別支援学校に在籍する児童生徒の障害は重度、重複化しており、障害の状態や発達度合いも多様化している。障害を持つ児童生徒の教育において、多様なニーズに応じたICT支援機器の利活用が勧められているが、特別支援学校の教員全てが、特殊な入力機器の設定や基本操作に慣れており、ソフトウエアの知識をもっているわけではない。また、重度の知的障がい児に適した学習用教材ソフトウエアの種類、数は十分でないという問題もある。本研究では、ICTの教育を行う3大学が連携協力し、地域特別支援学校への技術的・教育的支援を行うことを目的とする。本年度は、新たに、Augmented Reality(AR:拡張現実)技術を用いた教材ソフトウエアを開発した。これは、ARカードに描かれたシンボルや文字をPCに接続したカメラから読み込むと、PC画面のARカード上に3次元CGオブジェクトが表示され、そのカードのシンボルや文字が何を意味するかを学習できる。これらの教材を支援学校の授業で利用した教員の評価は高く、児童生徒は不思議そうな表情を見せたり、嬉しそうに手をたたいたりなど良い反応を示した。絵カード、平仮名カード、漢字カードを組み合わせて学習することにより、色々な学習レベルの生徒たちが一緒に楽しみ、勉強できることも確認された。また、算数学習用ボウリング教材も開発し、特別支援学校で生徒らが利用した。実際にはボウリングをすることが困難な肢体不自由児もタッチセンサーによる入力機器を利用し、自分の意志でキャラクター、ボール、投げる位置を選択して疑似的にボウリングを体験しながら算数の勉強をおこなった。自分でタッチしようという意思により、微弱だった手の動きに大きな変化が見られた。サービスラーニングとして児童生徒に合う教材ソフトや入力機器を開発し、特別支援学校で授業支援をする経験は、大学生にも良い影響を与えた。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
(IJACSA) International Journal of Advanced Computer Science and Applications
巻: Vol. 9,No. 6 ページ: pp.83-89
10.14569/IJACSA.2018.090612