研究課題/領域番号 |
15K01104
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研究機関 | 中国学園大学 |
研究代表者 |
佐々木 弘記 中国学園大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50170692)
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研究分担者 |
宮地 功 岡山理科大学, 総合情報学部, 教授 (30043722)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報モラル / 道徳の時間 / タブレット / 読み物教材 / ブレンド型授業 |
研究実績の概要 |
情報モラル教育が学校教育に普及しつつあるが,ネットいじめや電子掲示板への誹謗中傷の書き込みといった問題が後を絶たない。原因は知識の欠如というよりもむしろ児童生徒の「心の働きの相反性」(頭では分かっているのだが,情動・衝動や好奇心等に負けて不適切な判断をしてしまう)にあると考え,それを克服するための道徳の教材とタブレット型PCを用いたブレンド型授業のモデルを開発し,授業実践を通してその効果を測定することを目的とする。平成27年度には,次の3点を中心に研究実践した。 (1)「心の働きの相反性」を克服するための道徳の教材の開発と試行。道徳の教材として,①モラルジレンマを導入した読み物教材,②既存のアニメーション教材をアレンジした教材,③「心の働きの相反性」に焦点を当てた教材,を開発した。先行事例の検討や授業実践の評価を通して次の3点が明らかになった。①モラルジレンマ教材は,情報モラルと他の価値の対立となるため,情報モラル教育に用いるのには慎重にならざるをえないこと,②既存のアニメーション教材は児童の興味を喚起でき,効果的であったこと,③「心の働きの相反性」に着目し,構造化方式を用いた教材は,学習者に心の弱さに着目させることができ効果的であること,を明らかにした。 (2)情報モラル判断を阻害する要因の特定。SNSや電子メール等情報手段毎に,情報モラル判断を阻害する要因を特定するために,アンケート項目を作成し,小学生を対象に調査を行ったが,不適切な情報モラル判断に対して肯定的な回答が少なかったため,要因の特定には至らなかった。 (3)タブレットPCに導入する情報モラルコンテンツの作成。(1)で試行実践した結果として,「心の働きの相反性」に着目し,構造化方式を用いた教材をタブレットPC用に翻案・修正し,小・中学校各1編を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には,「心の働きの相反性」を克服するのにふさわしい道徳の教材を探り,その教材をタブレットPCに組み込むことが主な目標であった。道徳の教材として,①モラルジレンマを導入した読み物教材,②既存のアニメーション教材をアレンジした教材,③「心の働きの相反性」に焦点を当てた教材,の3つのタイプの教材を作成し,小学校での授業実践を通して評価した。その結果,①モラルジレンマ教材を情報モラル教育に用いるのには慎重にならざるをえないこと,②既存のアニメーション教材を参考にして,新たにタブレットPC用のコンテンツを開発するのが有効であること,③構造化方式により授業が展開できる教材が有効であること,が明らかになった。その成果を用いて,構造化方式を用いた教材をタブレットPC用に翻案・修正し,小・中学校各1編を開発することができた。したがって,本年度の主な目標はおおむね達成することができたと考える。ただし,情報モラル判断について調査するアンケート項目を作成し,小学生を対象としてアンケート調査を実施したところ,不適切な情報モラル判断に対する肯定的な判断をする回答が少なかった。これは,対象の小学生が十分適切な情報モラル判断ができていたことによるもので,望ましい結果ではあったが,アンケートからは,阻害する要因を特定することができなかった。適切な情報モラル判断を阻害する要因を特定するためのアンケート項目の工夫が必要となってくる。以上,アンケート項目に一工夫が必要であるが,道徳教材の検討とタブレットPC用のコンテンツ作成は順調に進んでいるので,「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,タブレットPCに開発した道徳の教材を組み込み,家庭での事前事後学習と教室での対面授業とから成るブレンド型授業を,小・中学校各1校において試験的に実施し,評価することが主な目標である。ところが,当初予定していた協力校がタブレットPCを家庭に持ち帰るのを控える方針に変更したため,学校が所有するタブレットPCを使えなくなった。そこで,安価なタブレットPCを児童生徒用に購入することに計画を変更した。タブレットPCを購入するための予算は,当初,Web/APサーバにLMSシステムを設置して,作成したコンテンツを登録し,配信・管理する予定であったものを,レンタルサーバに変更することで確保する。そのようにして購入したタブレットPCに開発したコンテンツを組み込み,ブレンド型の道徳授業のモデルを設計する。設計したモデルに基づいて,小・中学校各1校においてブレンド型授業を実践する。児童生徒・保護者に受講した授業についてアンケート調査を実施し,それを分析し,見直し,改善を図る。このようなPDCAサイクルを回して,ブレンド型授業のモデルを最適化していく。更に小学校用10編,中学校用5編コンテンツを開発して,授業実践していく。 平成29年度には,LMSシステムに開発した教材・コンテンツを登録し,eラーニングで学習できる環境を構築して,協力校の児童生徒・教員だけでなく,県内外の方々にも利用できるようにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,協力校のタブレットPCに開発した道徳の教材を組み込んで活用する予定であったが,協力校がタブレットPCを家庭に持ち帰るのを控えるように方針を変更したため,本研究に用いるタブレットPCを児童生徒数分だけ購入する必要が生じた。平成27年度には,①コンテンツ作成用のノートPCとコンテンツの動作確認用のタブレットを購入するために物品費約46万円,②コンテンツ作成のための人件費・謝金8万円,を計上していたが,これを取りやめることとした。そして,平成28年度に計上予定している物品費66万円と合算し,120万円の予算で,児童生徒用のタブレットPCを購入しようと考えた。平成27年度中に,安価で高性能のタブレットPCを探し,平成28年度にまとめて購入するため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度初めに,安価で高性能なタブレットPC(CLIDE W10A,税込み34,000円)を35台購入する予定である。 34,000円×35台=1,190,000円
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