研究課題/領域番号 |
15K01110
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
阿蘇 和寿 石川工業高等専門学校, その他部局等, 名誉教授 (80110154)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電子教科書 / 数学 / 線形代数 / 微分積分 |
研究実績の概要 |
本研究は高専および大学で用いられる数学(とくに微分積分と線形代数)の電子教科書システムを作成し,その有効性を検証しようというものである.これまでの教科書と異なるのは,印刷・製本された書籍としてではなく,パソコン,タブレット,スマートフォンなどからアクセスすることができ,数学の応用分野を学ぶ際に,数学を自由に使いこなさせる能力を涵養することを目的としている点にある. 研究初年度である平成27年度には電子教科書システムの全体の形をほぼ完成させることができた.さらにコンテンツの一部を入力し,外部からアクセスすることができるようになった.URL は tams.bitstream.co.jp/ である(アクセするための ID は tams,パスワードは 2016). 研究の第2年目である平成28年度は,本研究の外部への周知および有益な意見交換を目的として,日本数学教育学会(8月)と北陸四県数学研究大会(10月)において研究発表を行った.システムついては全体のデザインの変更,外部ファイルの参照方法の改善などの細かい修正作業を行った. また,サーバー上でのみ稼働していたシステムを,VMWare がインストールされたパソコン上で稼働できるようにした.これは USB 等で簡単に配布することができ,これによって,学内外を問わず多くの教員が,それぞれの目的に応じて活用できるようになった.このことは,システム自体が,各教員が自作の教材を作成し,それを蓄積して学生の便宜に供したり,授業で再利用できるようになるという意味がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究が行う作業の内容を大別すると「システムの作成」,「コンテンツの整備」,「有効性の検証」の3つがある. このうち,「システムの作成」は平成27年度,28年度にほぼ完成している。今後はそのシステムを石川高専のサーバーにインストールする作業を行う.研究期間内は業者(ビットストリーム社)のサーバーに保存しで利用することが可能だが,研究期間終了後(平成30年3月に終了)は,その便宜が期待できなくからである.また,研究期間終了後は石川高専のサーバーにおき,本格的に一般公開する段階に入ることから,そのための環境整備を行うものである. 「コンテンツの充実」は予定通りには進んではいない.全体としてみれば,平成29年4月現在,最初の2年間に行われるべき作業のうちこれは,7割程度が消化されたという状況にあり,平成28年度中にほぼ整備が終わると見込んでいたコンテンツの作成作業が,おそらくは平成29年9月頃になると見込まれている.したがって,現在までの進捗状況は,やや遅れているという区分であると判断せざるを得ない. この作業の遅れは,今後の作業にも影響を与えることになった.平成29年春に予定されていた「有効性の検証」の最初の機会に間に合わなくなったため,当初の予定より約半年間の遅れを生じる.今後の予定としては,平成29年度7月,10月,12月,3月のいずれかの機会を捉えて,研究代表者の所属する高専での第3学年の学生を対象に,この検証を進めることとしたい.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は3年間の研究期間のうち最終年度にあたるため,「システムの作成」,「コンテンツの整備」,「有効性の検証」のそれぞれについて,一定の成果を達成することができるように計画する. すでに述べたように「システムの作成」はすでに終わっており,必要な作業を業者に依頼するのみである. 急がれるのは「コンテンツの整備」であり,このうち『線形代数』については7月中旬まで,『微分積分』は9月下旬までに整備が終了することを目途として作業を行う.現在のところ『線形代数』はベクトル空間,基底およびその変換,線形変換,基底の変換による線形変換の表現の変化(行列の対角化,ジョルダン標準化)などを進めていく.作業が遅れていた理由の1つに,当初予定としていなかった『基礎数学』の章を設けたとことが挙げられる.作業を進めるにしたがってこの必要性を認識したためといえる.今後は基礎数学と線形代数を『微分積分』の内容に関連させ,微分積分の応用を視野に入れた総合的な教材としていくことを目標とする. これに伴って,「有効性の検証」は第3学年の開講される科目のうち「線形代数II」(前期に開講),「総合数学」(後期に開講)の各科目において行われることになる予定である. なお,これまでに研究期間で研究の遅延が遅れた大きな理由は,(基礎数学の章を追加したことに加え)研究代表者の体調不良により,入院を含んで平成27年度には5ヶ月間,平成28年度には3ヶ月間のブランクが生じたことによる.この体調不良は平成29年度4月現在も続いており,今後の研究推進に障害が出る可能性がないとはいえない.
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次年度使用額が生じた理由 |
システム作成,サーバー保守,デザイン改修および機能追加に要する費用が,当初の見込み額より安価に達成できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
システムの移行および保守に30万円程度。研究打合せおよび資料収集(日本数学教育学会春季大会(横浜),夏季大会(和歌山))への旅費10万円程度,現在使用中のノートパソコンが不調なための買い換え費用20万円程度,その他の消耗品7万円程度。
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備考 |
ID:tams Password:2016
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