研究課題/領域番号 |
15K01111
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研究機関 | 鳥羽商船高等専門学校 |
研究代表者 |
江崎 修央 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (30311038)
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研究分担者 |
森谷 健二 函館工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90342435)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / 遠隔支援 / LMS / 就労支援 / Office365 / スクリーンリーダ |
研究実績の概要 |
視覚障害者は全国に約30万人おり、その多くはマッサージ業務、または事務的業務に就労している。事務的業務で就職するためには、Officeツールの利用など、ITスキル獲得が必須となっている。ITスキル習得のためには、障害者職業訓練校や就労移行支援事業所を利用することが多い。生活訓練機関は全国で70か所あるが、視覚障害者向けの職業訓練校や就労支援事業所は大都市圏を中心に数カ所しかなく、全国的に見て地域格差が激しい。そのため地方に住む視覚障害者は訓練校に通えず、スキルを習得が難しいといった問題がある。 近年、クラウド技術の発展により、オンラインでのファイル共有や共同編集が容易に行えるようになった。例えばOffice Onlineのようなオンラインでのファイル編集ツールが登場し、単一ファイルを複数人で同時に編集することも可能である。クラウド技術を利用することで、遠隔地でも就職活動に向けた学習を円滑に支援できると考えた。 そこで、 Microsoftが提供するオンラインのOfficeツールであるOffice365を採用した。これによりオンラインファイル共有やコンピュータへの自動同期、単一ファイルの複数人同時編集が実現できる。 現状、視覚に障害を持つ利用者が行う訓練としては、タッチタイピング、スクリーンリーダによる画面読み上げ、Word、Excelなどのオフィスツールの利用、電子メールの利用、Webページの閲覧などが挙げられる。本研究では主にオフィスツールの利用、電子メールの利用、Webページの閲覧訓練について取り組んだ結果、評価実験結果より遠隔支援が可能であるとの見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学習支援システムは、 Office365の「サイト」機能を用いて構築する。Office365では、サイト上で共有した課題ファイルへのフィードバックが投稿できる。投稿内容は、電子メールにより訓練者へ通知される。これにより、支援員によるオンラインでの就労訓練課題の出題と評価を実現する。今回構築した学習支援システムでは、この流れを大きく変えることなく、課題をこなすことが出来るように配慮した。本稿における「課題」とは、東京都視覚障害者生活支援センターにおいて利用されているWord、Excelなどによるファイル作成を指す。 本システムでは、支援員が学習ファイルをアップロードする「Office365上の課題フォルダ」と支援者のパソコン内の「課題フォルダ」を同期させ、課題の共有を行う。支援員が新しい課題を追加すると、訓練者は特別な操作をすることなく、課題ファイルを閲覧・編集することが可能となる。訓練者は同期フォルダから課題を選び、Microsoft Officeで課題ファイルを編集することで就労訓練を行う。また、支援員は訓練者が編集した課題ファイルを学習支援サイトで閲覧することで、各訓練者の課題実施状況を把握することができる。支援員はサイト上で訓練者の各課題ファイルにフィードバックを付けることができ、フィードバックが書き込まれると、その内容は自動で支援員のメールに送られる。メールはOutlookで閲覧し、フィードバックを確認できる。 評価実験として我々は①サイト上でのファイル編集、②ライブラリ同期によるファイル編集にかかる手数(ステップ数と時間)に関して比較実験を行った結果、ライブラリ同期を用いればこれまでの一般的なOfficeツールの修得を行っていくだけで、修得状況が支援員に伝わり、適切なアドバイスができることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、東京都視覚障害者生活支援センターに通う訓練者を中心に、センター内、および自宅での利用促進を図り、実際の訓練として活用可能かの検証を行なう。特に、自宅での利用について、適切にフィードバックができるか、訓練者との意思疎通が図れるかを重点的に確認する。 また、必要であればデスクトップ共有機能を活用し、操作方法で困ったときには、訓練者の画面を確認しながらアドバイスする方法についても検討を行う。例えば、WordやExcelの利用方法で困ったときには、Skype for businessなどの会議ツールを利用し、デスクトップ共有を行なうことで、具体的な操作方法の教授が行える。 一方で、支援センターの支援員に限らず遠隔支援可能な組織づくり、仕組みづくりの構築も検討を始める。本取り組みが全国的に認知されれば、東京に限らず全国の利用者に対して支援が可能となる。つまり、かなり多くの訓練者に対して個々のニーズに合わせた訓練を提供し、支援をしていく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
函館高専の森谷准教授へ10万円を分担金として渡し、研究に関する打ち合わせ旅費として利用予定であったが、森谷准教授が米国での留学プログラムに参加することとなったため、必要な打合せはオンライン会議で実施した。これにより、分担金に手を付けていない状況となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
森谷准教授との対面による打合せを実施するほか、視覚障害者支援の機器開発に必要な部材購入等に充てる。
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