内閣府の平成23年度身体障害者の全国推計数によると,現在,施設に入居していない就労可能な視覚障害者数は約6万1千人である.就労可能の基準は,労働基準法における「年少者」と定年下限の60歳以上の者を除いた,18~59歳の男女としている.そして平成25年に改正された「視覚障害者雇用促進法」により,対象労働者数56人以上の規模を持つ民間企業は社員数の1.8%の障害者を雇う義務がある.よって障害者雇用の需要は高まっていると言える.加えてPCでの操作および表示内容を音声で読上げる「音声読上げソフト」の登場により,視覚障害者が事務的業務に就労するケースが増えた.この職種ではOfficeツールでの文書作成等のITスキル習得が必須であり,就労希望者は施設で訓練することが望ましい. 視覚障害者向け就労訓練施設は全国に70か所あるが,その分布は大都市圏に集中している.県によっては施設が一か所もないなど全国的に地域格差が激しいため地方の視覚障害者が施設へ通うには移動費が高く,移動時間もかかり学習時間が短くなってしまう.そこで支援施設の職員(以下支援員)は視覚障害を持つ学習者の自宅を訪問して指導を行っているが,移動時間がかかり一人当たりの学習時間は限られる. そこで我々はクラウドサービスを利用して「就労支援訓練」に含まれるパソコン操作について,視覚障害を持つ学習者が自宅でも訓練を実施し,支援員からサポートを受けられる「学習支援システム」を構築した. 本研究は東京都視覚障害者生活支援センター(TILS)と共同で実施した.現状は学習者がTILSに赴き,施設内のパソコンで課題ファイルを編集して学習する.支援員は随時質問に答え,学習者が課題を終えた際には口頭やメールでフィードバックを行っている.本システムではこの流れを大きく変えることなく,学習者が課題をこなすことができるよう配慮した.
|