本研究は使用済み核燃料の最終処分に関する史的分析を行うものであるが、今年度は過年度で実施できなかったフランスとフィンランドの深層処分施設の視察を最優先した。さらにフランス地域情報フォローアップ委員会(以下CLIS)での文献調査とCLISの委員へのインタビューを行いオーラルヒストリーの資料とした。 ①フィンランド・オルキルオト地下最終処分研究所視察:深地層である原生代(19 億年)のミグマタイトと花崗岩、12 億年の輝緑岩の岩脈層に建設された地下研究所を視察した。同時にユーラヨキ地域において原発サイトが観光地と同等に扱われていることを理解した。 ②フランス・ビュールCLIS資料:高レベル放射性廃棄物深地層処分地下研究所建設中のフランス・ビュールにはCLISが設置されている。そこでCLISを訪問し、保管されている資料について調査し、特にフランス各地のCLIの活動記録と公衆意見聴衆記録については、 原子力大国フランスにおける一般市民の原子力開発に対する賛否両論を認識するための必須の資料であることを明らかにした。 ③CLISでのインタビュー:1991年の「放射性廃棄物管理研究法」と1999年の「ビュールへの地下研究所の建設・操業許可に関する政令」に基づき、 1999年11月に CLISがビュールに設置された。 以後現在までのCLISの活動の歴史について、設立当初からCLISの委員長を務めているB.Jaquet氏他、労働組合代表者や隣接する村の元村長に対しインタビューを行った。そして1999年には先のことと思われていた深地層処分の問題が18年経過して具体化されるにつれ、詳細かつ直接的な地域住民への情報提供の実現という問題に直面していること、放射性廃棄物管理機関による「可逆性のある地層処分」という説明の背後には、地下研究所の建設・操業を実行に移す戦略があったこと等を記録した。
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