| 研究課題/領域番号 |
15K01127
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| 研究機関 | 龍谷大学 |
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研究代表者 |
小長谷 大介 龍谷大学, 経営学部, 教授 (70331999)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | 基礎物理学研究所 / 湯川秀樹 / 湯川記念館史料室 / 京都大学 / 素粒子論 / プリンストン高等研究所 / 朝永振一郎 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は、20世紀を通して設立された欧米・日本・アジアにおける理論物理学研究所（以下、理論研）を歴史的に調査・分析し、各国の社会発展・国際展開の一つの表象物として理論研をとらえながら、各理論研の設立の時代背景、その設立が国内外および他分野の研究制度に与えた影響を明らかにするものである。
平成29年度では、第一に、京都大学基礎物理学研究所（以下、基研）設立の主要因となった湯川秀樹の素粒子論研究への分析に主軸をおき、とくに、湯川の物理研究の原点となった1930年前後の状況について探ることとした。1930年前後の湯川を知る手がかりは京都大学湯川記念館史料室所蔵史料にあり、主な対象史料は、湯川の卒業論文下書き断片群「京都帝国大学理学部物理学科卒業論文」、1929-1934年に筆写された直筆ノート類「Quantenelektrodynamik I-V」「Quantenelektrodynamik Heisenberg-Paulische Theorie」、1930-1931年に筆写された直筆ノート類「Memoir and Abstract I-II」である。こうした史料の部分的な分析により、湯川が「思い出すこと」で記した「ディラック(Dirac)の相対論的電子論をもダーウィン(Darwin)などに従って純波動論的に解釈しようと努めた」という当時の足跡を史料で確認できた。
第二に、湯川や朝永振一郎が基研のモデルと述べた米国プリンストン高等研究所（以下、高等研究所）と基研の関係を探るため、1948-1949年の湯川、1949-1950年の朝永のプリンストン滞在に関する史料を高等研究所アーカイブズセンターで調査した。調査史料の分析は現段階では不十分であるが、当該史料は1940年代後半のアメリカと日本の間の国際関係を色濃く反映する貴重なものである。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、平成29年度の実施内容は平成28年度と同様に、(1)京大・湯川記念館史料室所蔵の湯川史料、基研所蔵史料、日本学術会議所蔵史料を通した基研の設立過程の調査、(2)湯川記念館史料室所蔵の広島大学理論研関連史料などを通した広大理論研の設立・再建の過程の調査、(3)上記の調査内容を補完するための、小沼通二（慶應義塾大学名誉教授）らの基研関係者への聞き取りの実施、(4)海外の理論物理学関連の研究所の事例研究のための史料の把握および調査の実施、(5)(1)～(4)の成果の学会、研究会での報告であった。
平成29年度では、(1)～(5)の一部を実施しつつも、当初の計画に付加した1930年前後の湯川の理論研究の歴史的分析に力点を置いたことによって、全般的に「やや遅れぎみ」となった。
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| 今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の平成30年度の研究は、平成27～29年度の調査の補足、調査および分析の成果をまとめて、科学史関連雑誌（和文・欧文）への論文投稿もしくはその準備、さらには諸成果をまとめた報告書の提出、関連書籍の出版準備を進めることであるので、それらを推進しながら、平成29年度に取り組んだ1930年代湯川の理論研究の歴史的分析を拡充して、理論物理研究の展開の基研などの制度構築への影響を歴史的にとらえる分析も進める。
また平成30年度は最終年度であるが、米国・高等研究所と基研の関係や湯川・朝永らの米国滞在の影響をさらに探るため、1948-1953年の湯川、1949-1950年の朝永の米国滞在に着目して、高等研究所やコロンビア大学での彼らの活動に関連する史料を現地で調査する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
（理由）次年度使用額（A-B）が生じた理由は、本研究実施事項の一部にある、竹原書院図書館所蔵史料、広大文書館所蔵史料を通した広大理論研の設立・再建の過程の調査、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校の理論物理学研究所、英国ニュートン数理科学研究所、中国科学院カブリ理論物理学研究所などの設立・発展に関連する史料の把握に向けた実地調査を実施しなかったことによる。それらは、「1930年前後の湯川秀樹」（2017年6月）、「湯川秀樹の1930年前後の研究ノート類について」（2018年3月）、「1930年前後の湯川秀樹を再考する」（龍谷紀要、2018年3月）などの成果にあるように、当初の計画に付加した1930年前後の湯川の理論研究の歴史的分析に力点を置いたことによる。
（使用計画）平成29年度に付加的に取り組んだ1930年代湯川の理論研究の歴史的分析を拡充させて、それらの研究内容と基研などの制度構築への影響を視野に入れつつ、それらの成果を学会や研究会で報告する。加えて、米国・高等研究所と基研の関係や湯川・朝永らの米国滞在の影響をさらに探るため、1948-1953年の湯川、1949-1950年の朝永の米国滞在に着目して、高等研究所やコロンビア大学での彼らの活動に関連する史料を現地で調査する。
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