研究課題/領域番号 |
15K01136
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
奈良 貴史 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (30271894)
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研究分担者 |
安達 登 山梨大学, 総合研究部, 教授 (60282125)
鈴木 敏彦 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (70261518)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 古人骨 / 縄文時代 / 古病理学 / 骨考古学 / DNA解析 / 年代測定 / 安定同位体分析 |
研究実績の概要 |
岩手県大船渡市野々前貝塚、長谷堂貝塚から東日本大震災による復興住宅の建替えに伴い縄文時代と思われる人骨が出土したが、専門家による鑑定を受けないまま大船渡市吉浜の整理事務所に保管されていた。震災復興事業で出土した人骨が、このまま人類学者の鑑定を得ずして放置されることは、人類学の分野のみならず考古学の分野でも大きな損失となる。そこでこの2遺跡出土の縄文時代の人骨を基礎資料として広く活用できるため、整理研究を進めることにした。 野々前貝塚からは2地点合計9体の人骨が出土している。2地点は30m程離れており、いずれも住宅建替えの時の浄化槽設置工事に伴って出土した。調査面積は浄化槽設置のため2×3mと狭く、それぞれ人骨は4体、5体と密集した状態で埋葬されていたものと思われる。いわゆる縄文時代の墓域内の埋葬小群を掘り当てたものと思われる。 出土人骨を全て新潟医療福祉大学に搬入し、クリーニング・復元作業を行った上、形態学的な検討を奈良貴史と鈴木敏彦が行った。さらに、出土した骨そのものから採取した試料を用いて加速器による放射性炭素年代測定、安定同位体分析などの骨の化学分析を東京大学の米田穣が、DNA解析を山梨大学の安達登が担当し、人骨の分析を多角的に行うことで、骨から得られる情報を最大限に引きだそうと努めた。その結果を第69会日本人類学会でポスター発表し、さらに日本人類学会和文機関紙Anthropological Science (Japanese Series) に 「大船渡市野々前貝塚縄文時代人骨の形態人類学的および理化学的分析」と題して投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人骨の形態学的検討は予定通り終了し、理化学的分析も失敗することなく全て結果が得ることができた。結果の内容も放射性炭素年代測定は考古学的知見と矛盾することなく縄文時代晩期と推定され人骨の帰属年代が明らかになった。安定同位体分析の結果も従来報告されている縄文時代晩期三陸沿岸の人骨と同様の結果が得られ貴重な資料の追加となった。ミトコンドリアDNA解析も胎児以外試みた人骨全てから検出に成功た。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は予定通り研究が進んだので、今年度は比較資料を充実させるため他の遺跡出土の縄文時代人の形態学的検討、安定同位体分析、ミトコンドリアDNA解析を行う予定である。特に昨年度の形態学的検討で頸椎の変形性関節症、外耳道骨腫など興味深い病変例が発見されたので、これらの病変の時期別、地域別の出現頻度などを明らかにして縄文時代人の健康状態解明に努めたい。また、最終年度に地元大船渡市で研究成果を一般に公表するために公開シンポジウムと出土人骨の展示を企画しているが、その際出土した頭骨と幼児・成人骨の復顔したものを並べる予定である。今年度は出土人骨のうち2個体の復顔を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
人骨の復顔用に購入した3Dプリンターが当初の見積もりより安く納品されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
3Dプリンターは打ち出し途中で機械がしばし止まり、完成間近で製品が無駄になってしまい、フィラメント等のランニングコストが予想以上にかかる。生じた次年度使用額はそれに充てる予定。
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