研究課題/領域番号 |
15K01145
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
湯浅 万紀子 北海道大学, 総合博物館, 教授 (60182664)
|
研究分担者 |
清水 寛之 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (30202112)
藤田 良治 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (40515102)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 長期記憶 / 来館者研究 / 博物館評価 / 博物館学 / 認知心理学 / 高齢者 / 異世代交流 |
研究実績の概要 |
博物館という場で、高齢者が異世代の人々との交流を通して、互いに意味ある自律的活動を展開していくのに必要な諸条件を分析するため、明石市立天文科学館(兵庫県明石市)のシルバー天文大学と、愛知県北名古屋市での地域回想法を経験した後にさまざまな活動に取り組んでいる「いきいき隊」の昭和日常博物館(愛知県北名古屋市)での実践に注目し、調査を実施している。 明石市立天文科学館のシルバー天文大学の受講生のなかには、天文大学を受講することで知的好奇心を満たして生活を充実したものとしている方もいれば、加えて同館でボランティアとして活躍し、異世代の来館者そしてボランティアメンバーと交流している方もいる。一方、北名古屋市の「いきいき隊」は、地域の幼稚園や保育園、小学校など多様な現場で昔の遊びを伝える活動をグループで展開し、異世代間交流を実現している。活動の目的は自身の健康維持だけでなく、地域に貢献することであるとの意識が高い方も多く、メンバー間での交流も盛んである。多様な活動現場のなかから昭和日常博物館での活動の現場に注目している。 研究協力者とともに本研究用に設計した日本版の記憶特性質問紙(MCQ:Memory Characteristics Questionnaire)の質問項目を含む質問紙を確認し、前年度までの面接調査での聞き取り内容の妥当性を検討して確認した。 今年度は、明石市立天文科学館において、シルバー天文大学に限らず、同館の友の会とボランティアにも調査協力を呼びかけ、同館での数年から数十年前の記憶を語っていただける40才以上の方々へと調査対象を広げて協力者を募った。その結果、5名に協力いただき、質問紙調査と面接調査を実施した。一方、北名古屋市の「いきいき隊」の昭和日常博物館での実践は行われなかったため、現地での調査は実施しなかった。 並行して事例研究と文献研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
明明石市立天文科学館の友の会・ボランティア5名に、MCQの質問項目を含む質問紙調査と面接調査を実施した。調査対象を広げたが、協力者の数は多くなかった。しかし、質的調査の観点からは、5名から有効な回答が得られ、分析を進めている。 一方、昭和日常博物館では、高齢者が博物館で活動する機会がなく、参与観察を実施できず、対象者への質問紙調査と面接調査を実施できなかった。しかし、これまでの調査の分析を進めており、来年度には同館と地域の関係者へのヒアリングを進めていく予定である。 このため、調査の包括的な分析が完了せず、中間報告会は開催できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度と今年度に実施した調査の分析を進める。さらに、取り組みを担当する明石市立天文科学館と昭和日常博物館の職員や関係者らへのヒアリングも実施し、活動の意義を研究協力者とともに検証する。両館で報告会を開催し、関係者と議論することで、調査の成果を確認しながら研究を着実に進めていく。 また、これまでの研究成果に基づいて、研究代表者の所属する北海道大学総合博物館での高齢者と異世代交流の場を設定し、その活動の意義を多角的に検証する。 関連する学会誌や学会などで成果発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究協力館の1つである昭和日常博物館において、調査対象とする活動が実施されなかった。このため、現地調査の実施、もう1つの研究協力館である明石市立天文科学館における調査と併せた包括的分析、研究成果の報告を次年度にまわすことになった。このため、次年度使用額が生じた。
|