研究課題/領域番号 |
15K01147
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
杉山 岳弘 静岡大学, 情報学部, 教授 (70293595)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 博物館情報学 / オープンデータ |
研究実績の概要 |
平成27年度では、インタプリテーションの対話の分析と、博物館データベースに関するオープンデータ化と応用についての調査を行った。インタプリテーションで良く使われる典型的な対話パターンを明らかにするために、これまで収集したインタプリテーションの事例に対して、テーマ展開パターンによる対話分析手法を用いて分析を行った。さらに、オープンデータ化と応用に向けて、博物館データベースや収蔵品に関する資料の解説情報に対しても対話分析手法を応用してテーマ展開パターンを明らかにして、オープンデータ化をするための記述方法について検討を行った。具体的には以下の通りである。 1.インタプリテーション事例および博物館データベースの解説に対する対話分析:泉子・K・メイナードによる「会話分析」の対話に対するテーマ展開パターンを基本にする。詳細なトピックの分析、対話の質的分析を行い、インタプリテーションに必要となる典型的な対話のパターンを記述可能にする半構造的な記述方法を検討し、対話パターンのモデル化を行った。 2.対話分析からの対話パターンおよび対話シナリオのモデル化:対話シナリオのモデル化については、研究協力者の学芸員による企画展示の展示解説の準備から携わり、解説のシナリオを構成するためのシナリオ作成モデルを提案した。具体的には、学芸員の持っていると想定される収蔵品に関する知識を対話パターンにより記述して、このパターンの構造が持つテーマ展開パターンのつながりを基本としてシナリオを作成するモデルである。 3.博物館データベースのオープンデータ化に関する調査:東京国立博物館のミュージアム資料情報構造化モデルおよび共通語彙基盤について、データの記述仕様やメタデータについて整理・分類を行い、Linked Dataによる対話シナリオモデルの拡張のための基礎データを収集・検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目標である、学芸員によるインタプリテーションの対話分析および解説情報の分析を行い、浜松市博物館における収蔵品に関しての、具体的な対話パターンのモデル化およびデータベースの構築を実施できている。さらに、シナリオ作成モデルの構築、対話シナリオのモデル化、その検証を実施できている。また、オープンデータ化に向けてのメタデータの整理・分類を行い、対話シナリオのモデルの活用に向けた道筋を作ることができたため、当初の年度目標を達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの分析で明らかとなった対話パターンおよび対話シナリオのモデルを部分的に組み合わせ、半構造的な対話シナリオのモデルの設計を行い、博物館インタプリターの育成のための対話シナリオ設計手法を開発する。さらに、オープンデータ化の道筋を作り、オープンデータ化されたデータを活用して、応用の一つとして観光情報サービスのアプリケーションの開発を検討する。具体的な役割分担としては、半構造的な対話シナリオのモデルの設計を、代表者の杉山岳弘で行う。対話シナリオ設計手法の開発を、杉山岳弘と学芸員の栗原雅也氏とで行う。オープンデータ化と応用ソフトウェアの開発を杉山岳弘が行う。以下の通りである。 1.半構造的な対話シナリオモデルの設計(杉山岳弘)では、前年度で得られた対話パターンと対話シナリオをもとにして、部分的な共通部分で接合することで、半構造化を行い対話シナリオのモデルとして設計する。すでに、技術的な側面で、Linked Dataによる半構造の記述や公開の仕組みなども調査し、構造的なシナリオの記述可能であることが分かっている。 2.半構造的な対話シナリオ設計手法を開発(杉山岳弘、学芸員):1.で得られたモデルを利用して対話シナリオの設計手法を開発し、インタプリテーションにおいて対話パターンから柔軟に対話シナリオを設計できるようにする。 3.博物館データベースのLinked Dataによる対話シナリオのモデルの拡張(杉山岳弘):前回の科研費で開発したマルチモーダル・データベースのメタデータを、Linked Data化して、半構造の対話シナリオを記述できるように拡張する。また、対象の博物館のインタプリテーションの施設を利用して、実際に現場でマルチモーダル・データベースを活用した、半構造的な対話シナリオ設計手法を用いて、博物館インタプリターのデータ収集を行う。
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