本研究は東日本大震災の被災地における博物館教育指導者支援を目的としたもので、岩手県陸前高田市、大船渡市、釜石市等を主なフィールドとして研究を行っている。最終年度にあたる2017年度は、児童生徒のみならず教員を対象とした実証試験を行い、これまでに作成した学習プログラムを利用して博物館と学校の連携を図る手法について検討した。 実証試験は、昨年度台風の影響により実施できなかった「川のがっこう」を大船渡市立越喜来小学校において実施した他、釜石市や気仙沼市で海の生き物に関する体験学習を行った。また、大船渡市立博物館で開催された「教員のための博物館の日2017in大船渡」のワークショップとして、昨年度に印刷配布した体験学習プログラムワークシート「イカのひみつをさぐろう」を利用した体験学習を、大船渡市および陸前高田市の小中学校教員を対象に実施した。教員対象のワークショップには、事業プログラム中最も多い23名(校長、教諭、栄養士など)が参加した。ワークショップ後に実施したアンケート調査では、約8割が楽しんで学べた(今後活用していきたい)と答えた一方で、博物館の具体的な利用方法の提示を求める声や被災地の交通問題の指摘などがあった。昨年までのアンケート調査結果で明らかとなっていた教員の経験不足は、このようなプログラムの実施により解消していくことが期待される。 以上の実証試験の結果を受けて、これまでに印刷配布した「博物館教育プログラムガイドブック」と「川のがっこうティーチャーズガイド」を改訂し、それぞれ1000部印刷した。またワークシート「イカのひみつをさぐろう」も2000部増刷した。他にも教員からの要望が多かった学習プログラム用貸し出し教材の充実を図り、陸前高田市で開催された「生涯学習のつどい」において展示解説を行い好評を得た。
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