(1) 太平洋側地域における積雪分布特性の解析 南岸低気圧通過に伴う降積雪分布の地域的特性を明らかにすることを目的として、気象庁「地域気象観測委託積雪資料」を用いて日単位の積雪深、降雪深のデータセットを整備するとともに、1976/77年積雪期(11月~4月)から2001/02年積雪期にかけた25積雪期を対象期間として、地上天気図より南岸低気圧通過日を特定し、太平洋側地域751地点における日降雪深の抽出を行った。その結果、25年間に計538事例で南岸低気圧が関与した降雪イベントが抽出された。現在、このデータセットを用いて、降雪強度別の出現頻度、およびその空間的分布の特徴について解析を行い、南岸低気圧に伴う降積雪分布の気候学的特性としてまとめる方針で進めている。 (2) 南岸低気圧通過時の広域積雪調査 南岸低気圧通過時における降積雪分布の実態を把握するため、2017年3月26日~27日、および2018年1月22日~23日に広域積雪調査を行なった。その内、2017年3月の南岸低気圧に伴う降雪事例では、栃木県那須町の那須ファミリースキー場付近において雪崩が発生して48名の死傷者を出す事態となった。本研究では、雪崩発生地点を含む那須岳地域の降積雪特性を明らかにすることを目的として、Web上で公開されている多機関データと聞き取り調査等から得られた積雪深情報に基づいて、3月26日から27日にかけての南岸低気圧による降雪深の空間分布を調査した。その結果、3月26日から27日にかけた降雪域は中部地方から関東、東北南部で認められ、那須岳を含む栃木・福島県境付近の山地や阿武隈山地南部でも3月26日の日降雪深が30cm以上となっていた。一方、関東地方の平野部でもはっきりとした積雪がみられたのは、栃木県北部や千葉県北~中部など、かなり狭い範囲に限られていたことが明らかとなった。
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