研究実績の概要 |
本研究の最終到達目標である「動的土地利用情報の地図化」を集約的で複雑な農業的土地利用が展開しているインドネシア・中部ジャワの農村において実証することができた。この目的のためには衛星画像の利用が有効であるが,従前のような単純でルーチンな画像解析手法では十分な成果と精度を得ることはできない。高解像度(高空間分解能)の衛星画像データを用いることだけではこの問題は解決されない。アジアの熱帯モンスーン気候下にあるジャワ島においては乾季と雨季が明瞭であり,農作物の作付けパターンは空間的にも時間的にも複雑に変化する。さらに,農村ごとに灌漑設備や農業経営の様相が異なっており,これらさまざまな要因を考慮した多面的な視点からの衛星画像データの処理が必要とされる。これが本研究でいう「動的土地利用情報」の概念である。 本研究の最終年度として,実証的な研究は中部ジャワ・ジョクジャカルタ市に近接するメラピ火山の南東麓に位置する典型的なジャワの農村景観地域で行われた。土地利用分類の精度に大きく関与する現地のトレーニングデータは共同研究機関であるバンドン工科大学の学生の協力を得て農村レベルでの詳細な営農情報を収集し,多季節で取得されたALOS PALSAR, Sentinel-1とlANDSAT 8画像の画像解析のために用いられた。当初は光学センサー画像のみの利用を計画していたが,最終年度では電波系センサーであるSAR画像を採用することになった。雲被覆が想定以上にクリティカルな状況であったためである。 結果として,統計的な精度検証値として総合分類精度75%,カッパー係数で0.6を超える十分な農業的土地利用分類が完成した。これは,従前の衛星画像のみによる分類成果と比べて著しく詳細な区分がなされ,土地利用情報の地図化に動的な変数を組み込むことが有効であることが実証された。
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