本年度は,長崎県五島市および沖縄県八重山郡与那国町の2ヶ所で現地調査を実施した.五島市での調査は2018年10月に実施した.これは,境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)主催による「JIBSN五島セミナー2018」および「ボーダーツーリズム五島・済州島」への参加を含むものである.セミナーのテーマは「境界自治体の行政交流」と「境界自治体の地域連携教育」であり,自治体によるさまざまな交流がネットワークの形成に大きな役割を果たしていることが理解できしたし,コリアエキスプレスエア機をチャーターして出かけた韓国済州島への旅は,国境離島経済・観光の活性化にチャーター便が大きな役割を果たしていることを実感させるものだった. 次に,3月に実施した与那国町での現地調査では,同町では3年前に実現した光ファイバー通信網の整備を活かしてNTTドコモとの協同により「極地連携XICT」による地域活性化プロジェクトが実現化されつつあり,離島におけるインフラの整備の必要性とその活用が重要であること,さらにはチャーター便を活用した観光事業の活性化の重要性も実感できた.また,同町では「日本最西端の地」という知名度を活かした地域活性化にも力を入れており,国境離島というポジショナリティの有効化と位置づけることができる. 以上のように,国境離島には国境の向こう側を視野に入れた新しい風が吹いており,これらの地域の置かれたポジショナリティの変化を感じ取ることができた.今後は,ポジショナリティ・シフトをキー概念として研究成果の報告をまとめていきたい.
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