研究課題
本研究課題は、1.インドネシア海大陸域の降水データベース(地上雨量計・気象レーダー)を構築し、豪雨出現の時空間分布、及び豪雨をもたらすメソスケール対流システム(MCS)の生成・発達過程に関する動態把握を行うこと、2.豪雨発生環境を指標化すると共に、数値実験を通した豪雨生成メカニズムの解明を進めること、3.降水年々変動に及ぼす冬季アジアモンスーンの影響をエルニーニョ・南方振動(ENSO)とも対比し、定量的に評価することを目的としている。研究開始二年目の今年度は、昨年度に引き続き1.海大陸域の降水データベース作成作業を進め、主として1970年代以降、全国約150地点のインドネシア全域の日降水量データの取得を完了した。また、Pre-YMC集中観測2015実施期間(Years of Maritime Continent: http://www.jamstec.go.jp/ymc/ymc_japanese.html)を始めとする、スマトラ島西岸のBengkulu Cバンドドップラー気象レーダーデータの入手及びデータ解析を実施した。これらの降水観測データを基に、2.豪雨発生環境に関する解析を進め、Pre-YMC観測期間中のBengkuluにおける豪雨発生状況とマッデンジュリアン振動(MJO)との関連について示した(Wu et al. 2017)。また、3.海大陸域の降水年々変動に及ぼす冬季アジアモンスーンの影響に関して調べ、ジャワ島北西部の雨季の降水年々変動が、ENSOの位相よりも、冬季アジアモンスーンの北風変動に、より影響を受けていることを示す結果を得た(Matsumoto et al. 2017)。
2: おおむね順調に進展している
地上雨量計、気象レーダーデータの収集・整理を継続的に実施し、海大陸域の豪雨解析に必要な基本的なデータセットとなる、海大陸降水観測データベースの構築を進めた。また、得られたデータセットを基に解析を進め、スマトラ島沿岸多雨域やジャカルタ首都圏など海大陸域西部を中心として、豪雨出現の季節内変動や経年変動に関する論文発表を行った。
研究最終年度として、1.海大陸域降水観測データセットの構築を完了し、2.YMCなど現地集中観測実施期間を中心とした気象レーダーデータ解析によるMCSの動態把握、ならびに数値実験等による豪雨発生メカニズム解明に向けた解析を実施する。また、3.降水観測データセットの統合解析より、コールドサージなど冬季アジアモンスーンが海大陸域の降水変動に及ぼす影響評価を進め、研究成果を取りまとめる。
他研究課題予算でのインドネシア出張の機会も利用し、現地降水観測データの収集を進め、支出(海外旅費)を抑えた上で当初予定の計画を遂行したため。
平成29年度中頃にインドネシア出張を実施し、現地研究協力者との研究打合せを行い、降水観測データセット構築や、それに基づくデータ解析を効果的かつ継続的に進める機会を作るとともに、論文発表等、研究成果をより広く公表する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
The Global Monsoon System: Research and Forecast (3rd ed.)
巻: - ページ: 365-385
10.1142/9789813200913_0029
Scientific Online Letters on the Atmosphere
巻: 13 ページ: 36-40
10.2151/sola.2017-007