研究課題/領域番号 |
15K01169
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研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
岩間 信之 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (90458240)
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研究分担者 |
田中 耕市 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20372716)
浅川 達人 明治学院大学, 社会学部, 教授 (40270665)
駒木 伸比古 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (60601044)
佐々木 緑 広島修道大学, 人間環境学部, 教授 (70401304)
池田 真志 拓殖大学, 商学部, 准教授 (70555101)
熊谷 修 人間総合科学大学, 人間科学部, 教授(移行) (80260305)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フードデザート問題 / 高齢者 / 低栄養 / 食料品充足度調査 / 食料品アクセスマップ |
研究実績の概要 |
【研究目的】本研究の目的は,高齢者が健康な食生活を維持するために必要な食料品群(以下,食品群指標)を選定するとともに,実際に食料品店がどの程度食料品群を充足しているのか(以下,食料品充足度)を,研究対象地域ごとに調査することにある。これまで,買い物環境は食料品アクセス(店舗からの距離)のみから計測されてきた。本調査では,従来の食料品アクセスに食料品充足度を加味するころで,高齢者の買い物環境をより正確に反映した地図(以下,改良版食料品アクセスマップ)を作成する。 【研究成果】本年度の研究成果は,下記の2点である。①食品群指標の作成。②事例地域における食料品充足度調査の実施と,改良版食料品アクセスマップの作成。①については,栄養学の専門家から協力を得つつ,食品群指標を作成した。具体的には,厚生労働省の「国民健康・栄養調査食品群」に準じ,13の小分類(イモ類,豆類,種実類,緑黄色野菜,その他野菜,果物,きのこ類,藻類,魚介類,肉類,卵類,乳類,油脂類)に該当する合計54の食品群を選定した。これらを生鮮食品と加工食品に分けてリスト化し,調査票を作った。②については,茨城県牛久市を事例に,全ての食料品店(スーパー,コンビニ,ドラッグストア、ディスカウントストア,移動販売車:合計59店)で,食料品充足度調査を実施した。具体的には,調査票を持参して各店舗を回り,食料品群の有無をチェックした。調査に際しては,店舗に迷惑をかけぬよう十分配慮した。また,牛久市および各流通企業からは,事前に調査許可を得た。食料品充足度調査から,一部のコンビニやドラッグストアでは,スーパーに準じる充実した食料品群を供給していることが明らかとなった。これらの知見をもとに,改良版食料品アクセスマップを作成した。 【論文執筆】現在,本年度の調査結果を論文にまとめている。2017年度中に,国内外の学術雑誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である①食品群指標の作成,および②事例地域における食料品充足度調査の実施と,改良版食料品アクセスマップの作成は,順調に進んでいる。 ①については,老年栄養学の専門家と連携しつつ,日本の食習慣を反映した,優れた食品群指標を作成することができた。食品群指標の調査票には,店頭での有無をチェックする食品群名だけでなく,生鮮食品と加工食品(カット野菜,レトルト食品など)の区分方法や,食材としてカウントする分量(いわゆるサービング)なども明記してある。これらはいずれも、栄養学の基準に即したものである。また,店頭での調査項目は,現地調査がスムーズに進む程度の分量に絞り込んだ。そのため,汎用性の高い調査票となっている。 ②に関しては,牛久市での現地調査は完了している。調査結果は牛久市や流通企業にフィードバック済みである。改良版食料品アクセスマップは市役所でも好評であり,市役所員などを対象とした調査結果の報告会開催を依頼されている。また,これからも継続して調査協力をする旨の確約を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は,鹿児島県肝属郡南大隅町で,食料品充足度調査を実施する予定である。南大隅町役場や商工会とは,調査の打ち合わせを実施済みである。 昨年度調査した茨城県牛久市は,東京通勤者を中心とした住宅団地が卓越する西部と,農業地域が広がる東部が混在する地方都市である。市域東部は,相対的に食料品店が少ない。しかし,当該エリアは都市近郊農村に該当しており,1~2km移動すれば,容易に食料品店に到達できる。一方,南大隅町には,都市遠隔の農村や漁村が,広範囲にわたり点在している。特に,本土最南端に位置する佐多地区は,最寄りのスーパーまで16km以上離れた,真の買い物先空白地域である。同地区では,人口の少子高齢化も深刻である。南大隅町は,牛久市と比べても,高齢者の食生活の悪化が著しい。南大隅町は,食料品店だけでなく,公共交通機関や医療機関の欠如も深刻である。 こうした点を踏まえ,南大隅町の調査では,食料品充足度調査を進めるだけでなく,都市遠隔農村に暮らす高齢者の生活実態についても,詳細に調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度には,牛久市住民に対するアンケートを実施する予定であった。しかし,市役所が2014年に行った大規模なアンケート調査の個票データを利用できることになったため,独自にアンケートをする必要がなくなった。その分の差額を,次年度の使用額に回すことにした。 なお,2017年度は鹿児島県肝属郡南大隅町佐多地区を調査対象地域にする予定である。本調査に先立ち,現地でのプレ調査を行う必要があった。プレ調査は,2017年3月12日~15日に実施した。上述のアンケート調査費用の一部は,プレ調査の旅費に使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は,鹿児島県肝属郡南大隅町佐多地区を,調査対象地域とする。佐多地区は市街地から遠く離れた,真の買い物先空白地域である。医療機関や行政機関へのアクセスも,極めて悪い。さらに,人口の少子高齢化も深刻である。空き家も増えている。プレ調査から,当該地に暮らす高齢者の生活環境が,予想以上に悪化していることが明らかとなった。本年度は,食料品充足度だけでなく,高齢者の生活環境全般を詳細に調査したい。そのため,複数回の現地調査を実施する。現地調査のための旅費として,次年度使用額を用いる予定である。 具体的には,下記の三回に分けて現地調査を行う。第一回:2017年8月,第二回:2017年12月,第三回:2018年2月。それぞれ,一週間程度現地に滞在する予定である。
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