本研究は、中東史に名を残す大地震「749年パレスティナ大地震」の実像を、その震源とされるヨルダン・ヴァレー断層帯(JVF)の最新活動痕跡を精査して解き明かそうとするものであり、最終年度にあたる本年度においては、以下を試みた。 1)断層変位地形に関する空中写真再判読:初年度に、JVFの主要部(ガリラヤ湖南東端から死海北西岸に至る約110kmの区間)を対象にして、主断層帯の位置およびこれが伴う断層変位地形に関する空中写真判読を試みたが、本年度においても現地調査に備えて、改めて全域を対象に写真判読作業を行い、ヨルダン・ヴァレー断層帯の位置、形状、これに伴われる変動地形群の実態を詳しく観察しなおし、その結果を五万分の一地形図上に図示して現地調査用の基礎資料とした。また、この作業を通して、具体的な踏査予定地点やトレンチ調査候補地を抽出・選定した。 2)現地調査:空中写真判読結果の実地検証および変位量計測を目的とした現地調査を実施した。合わせてJVFの活動履歴データの収集を目的としたトレンチ掘削調査も計画し、その成果に期待をよせたが、一昨年に顕在化した現地の治安問題がいまだ改善されず、同じ場所に長期間の滞留を余儀なくされるトレンチ調査についてはその実施を断念せざるを得ない結果となった。 3)749年パレスティナ大地震に関する既存資料・文献の収集:これらの収集に引き続き努めたが、これまでと同様に関連文献・資料の収集は難しく、多くは得られなかった。今後も引き続き多面的に探索する努力を継続したい。
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